ヨンガー・エ・ブレッソン 《シャンボール ローズ・ゴールド 35石自動巻》 日付およびパワー・リザーヴ表示 サファイア風防 直径 39ミリメートル 新品



 ヨンガー・エ・ブレッソン(Yonger & Bresson)は 1975年にパリで商標登録され、現在はフランスのアンブル社(MONTRES AMBRE S.A.)が展開する時計ブランドです。本品はアンティーク品ではなく、当店がアンブル社から直輸入した新品で、ヨンガー・エ・ブレッソンが独自に開発した自社製オートマチック・ムーヴメント、アンブルMPB 1030(AMBRE MPB 1030)を搭載しています。




(上) Van der Meulen, "Louis XIV devant le château de Chambord" 十七世紀のシャンボール城。フランドル出身の宮廷画家ファン・デル・ミューレン(Adam-François van der Meulen, 1632 - 1690)の作品


 ヨンガー・エ・ブレッソンは自社製ムーヴメントを搭載した機種にフランスの城の名前を付けており、本品は《シャンボール ローズ・ゴールド》(Chambord Rose Gold)と名付けられています。シャンボール城はフランソワ一世(François Ier, 1515 - 1547)が建てた北方ルネサンス様式の巨大な城で、レオナルド・ダ・ヴィンチも設計に関わっていると考えられています。シャンボール城はヨーロッパで最も有名な城の一つで、ユネスコ世界遺産にも指定されています。





 時計内部の機械をムーヴメントといいます。またムーヴメントを保護する金属製の容器(時計の外側)をケースといいます。本品のケースはステンレス・スティール製で、ベゼル側にはローズ・ゴールドめっきを施し、裏蓋はステンレス・スティールのままとしています。丈夫で美しく、アレルギーも起こしにくいステンレス・スティールは、時計ケースの素材として優れています。





 ケース裏蓋はねじ込み式で、中央部分がガラス窓となっており、回転錘(かいてんすい ローター)の動作や、規則正しい天符(てんぷ)の振動を見ることができます。回転錘と裏蓋のベゼル部分には、ヨンガー・エ・ブレッソンの王冠マークが彫られており、ローター真(回転錘の軸)の末端にも王冠を模(かたど)る装飾が見られます。

 裏蓋のベゼルにはファブリケ・アン・フランス(仏 FABRIQUÉ EN FRANCE フランス製)、エタンシュ・ア・サンク・バル(仏 ÉTANCHE À 5 BARS 五気圧防水、50メートル防水)、ヴェール・サフィール(仏 VERRE SAPHIR サファイアガラス)、トゥタシエ(仏 TOUT ACIER 鋼製ケース)の文字、及び本品の品番(YBH8356)が刻まれています。

 本品の文字盤側の風防はサファイアガラスと呼ばれる人工サファイアでできています。人工のサファイアは天然のサファイアと同じ物質で、モース硬度「九」と引っかきに対して非常に強く、めったなことで瑕(きず)がつきません。サファイア製風防は高価ですが、瑕がつかないのは大きな利点です。

 時計ムーヴメントの輪列(カナと歯車の列)は、大きな板状部品によって所定の位置に保持されます。文字盤を取り付ける最大の板状部品を地板、それ以外の板状部品を受けといいます。本品の地板の裏側と受けは、小さな同心円状装飾で覆い尽くされています。この装飾をフランス語でペルラージュ(仏 perlage)といいます。ペルラージュとは真珠仕上げというほどの意味で、回転するゴム製チップを受けに押し付けて製作します。ペルラージュの同心円はそれ自体が綺麗な同心円状に配列されており、熟練した時計職人の丁寧な手仕事がよくわかります。

 なお上の写真では商品保護用の樹脂フィルムの反射により、ベゼルの一部がゆがんでいるように写っていますが、商品の実物にゆがみ等の瑕疵はありません。





 時計において時刻を表示する数字や目盛りを記した板状の部品を、文字盤(もじばん)または文字板(もじいた)といいます。文字盤の周囲十二か所にある長針五分ごと、短針一時間ごとのマークを、インデックスといいます。本品の文字盤は禁欲的なまでに装飾を排し、ローマ数字による重厚なインデックスがこれを引き締めて、上品さと高級感に溢れています。文字盤最下部にファブリケ・アン・フランス(仏 FABRIQUÉ EN FRANCE フランス製)の表示があります。

 本品のムーヴメント MPB1030の特徴は、アンディカトゥール・デネルジ(仏 indicateur d'énergie)、すなわちパワー・リザーヴ・インジケーター(英 power reserve indicator)を備えることです。後述するように本品は電池ではなくぜんまいで動く機械式時計で、ぜんまいを充分に巻き上げるとおよそ 40時間動作します。パワー・リザーヴ・インジケーターとはぜんまいに蓄えた動力の残量計で、ごく一部の機械式時計にのみ備わります。本品文字盤の最上部には王冠マークの下にヨンガー・エ・ブレッソンのブランド名、及びオトマティーク(仏 AUTOMATIQUE 自動巻)の表記があります。その下にある扇形がパワー・リザーヴ・インジケーターで、写真ではおよそ40時間のぜんまい残量を示しています。





 本品の四本の針は写真で見ると黒に近いですが、実物はいずれも綺麗な青色です。下方の小文字盤に付いているのは秒針で、六十秒で一回転します。現代の時計は中三針(なかさんしん)式といって、時針分針と同じ位置に長い秒針を取り付けますが、1950年代以前の男性用腕時計は六時の小文字盤にスモール・セカンドと呼ばれる小秒針を取り付けるのが普通でした。本品は現代に製作されたものですが、昔の時計に倣ったクラシカルなデザインで、六時の位置に小文字盤を有するスモール・セカンド式となっています。

 クォーツ式(電池式)の時計はステップ運針といって、秒針が一秒ごとに間歇的に動きます。クォーツ時計を耳に当てると、一秒ごとに秒針を動かす音がチッ、チッ、チッ…と聞こえます。これに対して本品のような機械式(ぜんまい式)時計の秒針はスイープ運針(連続運針)といって、秒針は滑らかに動きます。本品を耳に当てると、小人が鈴を振るように愛らしい音がチクタクチクタクチクタク…と聞こえてきます。





 現代の時計は電池で動くクォーツ式が普通です。しかしながらクォーツ式時計は 1970年代以降に出現した品物で、それよりも以前の時計は電池ではなくぜんまいの力で動いていました、ぜんまいの力で動く時計を機械式時計、英語でメカニカル・ウォッチ(英 a mechanical watch)、フランス語でモントル・メカニーク(仏 une montre mécanique)といいます。本品は現代の品物ですが、珍しいことにクォーツ式ではなく、ぜんまいの力で動くモントル・メカニーク(機械式時計)です。

 機械式時計には手巻式と自動巻式があります。時間を計る仕組みはどちらもまったく同じですが、自動巻きは回転錘(かいてんすい)という自由に動く錘(おもり)をムーヴメントに取り付け、その動きによってぜんまいが自動的に巻き上がるように工夫されています。本品はモントル・ア・ルモンタージュ・オトマティーク(仏 une montre à remontage automatique)、すなわち自動巻時計です。





 機械式時計の基本は振り子式のクロックです。振り子式クロックで最も重要な部品は振り子であり、振り子こそが時計の本体です。しかるに懐中時計や腕時計に振り子を取り付けることはできません。振り子は傾けると止まってしまうからです。そこで振り子と同様に等時性を有し、傾けても止まらない振動子が研究されました。こうして生まれたのが天符(てんぷ)です。天符はひげぜんまいの等時性に基づき、きわめて正確な周波数で振動します。ひげぜんまいの等時性を見出したのはロバート・フック(Robert Hooke, 1635 - 1703)、携帯用天符時計を初めて作ったのはクリスティアーン・ホイヘンス(Christiaan Huygens, 1629 - 1695)です。

 本品が搭載するムーヴメント MPB1030の天符は一時間あたり二万八千八百回の振動を正確に繰り返し、時を測ります。本品を耳に当てて聞こえるチクタクという音は、天符に制御された脱進機のアンクル入り爪が、ガンギ車の衝撃面にぶつかる音です。十七世紀に誕生してから現在に至るまでの四百年間、機械式時計は全く同じ仕組みで動いています。

 本品のように良質の機械式時計は、ムーヴメントの摩耗してはいけない部分にルビーを使います。天符の中心に見える赤い石がルビーです。ルビーはたいへん硬い鉱物ですので、高級時計の部品として使用されます。時計の外側からは見えませんが、本品のムーヴメントには三十五個のルビーが使われています。ルビーの数は十七個あれば良いとされているので、三十五個は充分すぎるほどの数です。





 ぜんまいを巻いたり時刻を合わせたりする際のツマミを、竜頭(りゅうず)といいます。三時の位置から突出するツマミが、竜頭です。玉ねぎ型の竜頭は懐中時計の時代によく見られたデザインで、本品にクラシカルな表情を添えています。竜頭には青色ガラスの装飾が付いています。

 竜頭は現代のクォーツ式(電池式)時計にも付いていますが、電池を入れ替えたとき以外、滅多に触ることがありません。クォーツ式時計の竜頭は操作し易く作る必要がないのでサイズが小さく、竜頭から機械内部に延びる心棒(竜真)もごく細いものとなっています。これに対して機械式時計の竜頭は操作しやすいように大きく作られており、竜真も太くて耐久性があります。本品は自動巻きですが、腕をあまり動かさないと、ぜんまいの巻き上げが不足することがあります。またぜんまいが完全に巻き戻って停止した時計を再び動かすには、最初にぜんまいを手動で巻く必要があります。そのような場合に備えて、本品は手巻きも可能になっています。竜頭は大きめで快適に操作できます。ぜんまいを巻くのはとても簡単で、誰にでもできることですので、初めての方でも心配は無用です。

 なお自動巻の時計を常に回転させてぜんまいを巻き続ける装置が市販されていますが、使おうと思ったときに時計が止まっていても、ぜんまいを手動で巻き上げれば良いだけですから、あのような機械は不要です。時計を常に作動させていないと機械が傷むということもありません。しばらく使わない場合は、動かさずにしまっておいて構いません。クォーツ式時計を長期間放置すると電池の液漏れで故障することがありますが、機械式時計にはそもそも電池が入っていないので、液漏れによる故障もあり得ません。機械式時計は予想以上に使い易く、初めての方でも快適にご愛用いただけます。







 本品のバンドは革製で、ディプロイアント式(折り畳み式)尾錠が付いています。尾錠にはヨンガー・エ・ブレッソンのマークとロゴ、ファブリケ・アン・フランス(フランス製)、トゥタシエ(ステンレス・スティール製)の文字が刻まれています。ディプロイアント式尾錠はベルトの穴の位置を変えることにより、サイズを自由に調整できます。バンド幅は 18ミリメートルで、お好みにより他の色、他の素材の汎用バンドに変更することも可能です。バンドが傷んだ場合も簡単に取り替え可能ですのでご安心ください。またディプロイアント式尾錠が好みに合わない場合は、よりシンプルな汎用尾錠にも取り替えできます。





 本品のサイズはケースの直径 39ミリメートル、厚さ 13ミリメートルという堂々たるサイズですが、良い意味で重厚である反面、ローズゴールドの温かい輝きゆえに、堅苦しさはありません。ケース側面とベゼルはいずれも上品なカーヴを描き、シャツの袖と見苦しくぶつかることもありません。本品の商品名は《シャンボール ローズ・ゴールド》ですが、日本やアメリカのローズ・ゴールド(ピンク・ゴールド)ほどの赤みは無く、伝統を引き継ぐヴィンテージ時計風のデザインと相俟って、日常に落ち着きをもたらしてくれます。スーツが似合う大人の時計といえましょう。

 当店の時計は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払い(金利手数料無料)でもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。遠慮なくご相談くださいませ。





89,000円 税込み

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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