ムーヴメントの石数(ムーヴメントに使用されるルビーの数)

 ETA 1080



 ルビーはモース硬度「9」と非常に硬い鉱物(コランダム Al2O3)です。したがって部品としてルビーを使うと、摩耗を防ぐことができます。

 機械式時計のムーヴメントは、石数(いしかず)、すなわちムーヴメントに使われているルビーの数によって、いくつかのグレードに分けることができます。同じクラブトゥース脱進機であっても、長い年月に亙って使い続けた場合の精度と耐久性は、石数によって違ってきます。

 良質のムーヴメントに使われる石数(ルビーの数)は、大まかに言って、年代が新しくなるほど増加します。1950年代頃の最高級時計には、二十三個ものルビーが使われている場合があります。二十三個は時計工学上意味のある石数の上限で、これ以上の石数は高級さを出して線在廷顧客に訴求するための販促ツールです。


 以下の部分では、ルビーが時計のどの部分に使われているのかを、実例に即して見てゆきます。



【7石のムーヴメント】

 機械式ムーヴメントの心臓部分は調速脱進機、すなわち調速機(天符)脱進機(アンクルとガンギ車)です。それゆえ機械式時計の精度と寿命を向上させるには、何よりもまず調速脱進機の精密さと耐摩耗性を向上させることが必要です。

 当店の腕時計、懐中時計はすべてクラブトゥース式脱進機を搭載しています。この種の時計の調速脱進機においては、「天符」の必要箇所(穴石と受け石各2個、及び振り石)、及び「アンクルの爪(入り爪と出爪)」に、合計七個のルビーが使われています。合計七個のルビーが使われたムーヴメントを、「7石」のムーヴメントといいます。

 調速脱進機の必要箇所すべてにルビーが使われていることは、良質の機械式時計であるために必要な最低限の条件です。クラブトゥース式のムーヴメントには、少なくとも「7石」(ななせき)のルビーが入っています。


 「7石」のムーヴメントの場合、時計の裏蓋を取ってすぐに見えるルビーは、天符の裏蓋側の受け石のみです。一見したところルビーは一個しか入っていないように見えますが、調速脱進機の必要箇所すべてに合計7個のルビーが使われています。

 下の写真は1930年頃に製作された7石の手巻ムーヴメント、エルジン「グレード 462」(3/0サイズ、振動数 18,000 bph)です。受けを丁寧に磨いて角を取った仕上げからは、良質の時計であることが一目で分かります。


 Elgin grade 462


【15石のムーヴメント】

 1930年代前半位までの古い時代には、9石、10石等のムーヴメントも作られていました。しかしながら9石や10石はいわば中途半端な石数で、1940年代以降には姿を消してしまいます。これらの中間的な石数はもともと製作数が少なく、いまではアンティーク・ウォッチにもほとんど見かけることがありません。したがってここでは説明を省略します。

 普通に見かけるアンティーク・ウォッチにおいて、7石の次にグレードが高いのは、15石のムーヴメントです。15石のムーヴメントでは、天符とアンクルの爪に加え、三番車、四番車、ガンギ車、アンクルを支えるのに、各2個ずつの穴石が使われます。スイスの高級時計には、15石のムーヴメントがよく使われました。

 下の写真は1940年代にスイスで製作された15石の手巻ムーヴメント、グリュエン「キャリバー421」です。天符の受け石に加えて、三番車、四番車、ガンギ車の穴石が見えています。


 Gruen cal. 421


【17石のムーヴメント】

 15石の次にグレードが高いのは、17石のムーヴメントです。15石ムーヴメントと比べると二個の石が追加されているわけですが、この二個を追加する箇所により、17石ムーヴメントは概(おおむ)ね三つの型に分けることができます。

a. ガンギ車用に2個の受け石を追加したもの

b. 二番車用に2個の穴石を使用したもの

c. ガンギ車用に1個の受け石を追加し、二番車用に1個の穴石を使用したもの。すなわち a. と b. の中間型

 17石ムーヴメントはいずれも「ハイ・ジュエル」(high-jewel) と呼ばれ、実用するうえで十分な耐摩耗性を有します。それぞれの型について以下に解説します。


a. ガンギ車用に2個の受け石を追加したもの

 調速脱進機を構成するガンギ車は、機械式時計において最も重要な部品の一つです。輪列を構成する二番車、三番車、四番車、ガンギ車のうち、摩耗を防ぐ必要性が最も高いのはガンギ車です。このような理由で、ガンギ車用に二個の受け石を追加して、潤滑油の喪失を防いでいる17石ムーヴメントがあります。

 下の写真は1940年代の女性用17石手巻ムーヴメント、グリュエン「キャリバー275」です。同社製の15石ムーヴメント「キャリバー421」と比較すると、ガンギ車用に受け石が追加されていることがわかります。このムーヴメントにおいて、ガンギ車の受け石は裏蓋側と文字盤側に一個ずつ追加されていますから、石数は15石のムーヴメントよりも二個増えて17石となっています。


 Gruen cal. 275


b. 二番車用に2個の穴石を使用したもの

 17石のムーヴメントのうち、第二ののタイプでは、三番車、四番車、ガンギ車に加え、二番車にも2個の穴石を使います。12時間で一回転する二番車は、回転速度が遅いゆえに他の車に比べて摩耗する可能性が少なく、それゆえに15石のムーヴメントではこの部分のルビーを省略しています。しかしながらもしも二番車が嵌まる穴が摩耗して真円でなくなった場合、二番車が傾くことによって針の先が文字盤に接触し、時計が止まってしまいます。したがってできれば二番車にも穴石が欲しいところです。

 男性用時計のムーヴメントは女性用時計のムーヴメントに比べて主ぜんまいの力が強いぶん、輪列に大きな力が加わります。このような理由で、男性用の17石ムーヴメントでは二番車に2個の穴石を使うことが多くあります。

 下の写真は1938年頃の男性用17石手巻ムーヴメント、ブロバ「キャリバー8AZ」(「フォンテンメロン キャリバー 125」)です。15石のムーヴメントと比較すると、二番車用に穴石が追加されていることがわかります。このムーヴメントにおいて、穴石は裏蓋側と文字盤側に一個ずつ追加されていますから、石数は15石のムーヴメントよりも二個増えて17石となります。


 Bulova cal. 8AZ (FHF cal. 125)


c. ガンギ車用に1個の受け石、二番車用に1個の穴石を追加したもの (a. と b. の中間型)

 既に述べた二つのタイプを折衷したのが、15石のムーヴメントに「ガンギ車用受け石1個」と「二番車用穴石1個」を追加した17石ムーヴメントです。

 下の写真はフランス製の懐中時計用17石手巻ムーヴメント、リップ「キャリバー393」です。ヨーロッパの時計は15石までのものが多いですが、この「キャリバー393」は17石の高級機です。


 Lip cal. 363 裏蓋側

 Lip cal. 363 日の裏側

(下) 「リップ キャリバー 363」では、日の裏側の二番車穴石が省略されています。下の写真は筒カナを取って、二番車の真を撮影しました。




 アメリカ製の腕時計、懐中時計はヨーロッパの時計よりもさらに高級な場合が多く、17石ムーヴメントが多用されました。アメリカで販売されたスイス製の時計も、アメリカ製に準じて、17石ムーヴメントを多用しています。またアメリカ製の時計、及びアメリカで販売されたスイス製の時計には、19石、21石、22石、23石のムーヴメントも見受けられます。


【19石のムーヴメント】

 17石ムーヴメントを二石ぶん上回るのが 19石ムーヴメントです。17石ムーヴメントと同様に、19石ムーヴメントもいくつかの型に分けることができます。

 下の写真は 1950年にアメリカで製作された女性用19石手巻ムーヴメント、エルジン「キャリバー 650」です。ルビーの使用箇所は、17石ムーヴメントの a. タイプに二番車用穴石二個を追加した状態です。


 Elgin cal. 650 裏蓋側

 Elgin cal. 650 日の裏側

  Elgin cal. 650 日の裏側 筒カナを抜いて撮影。


 1950年代半ば以降、エルジン社は自社製ムーヴメントの開発と生産から撤退し、スイス(ア・シールド、フォンテンメロン、ユニタス、フルリエなど)、ドイツ(PUW)、フランス(リップ)、日本(セイコー)等、他メーカーからムーヴメントの供給を受けるようになります。たとえば「エルジン キャリバー 653」は AS 1323 ですし、「エルジン キャリバー 657」は Lip R40、「エルジン キャリバー 659」は FHF 73 です。しかしながら「エルジン キャリバー 650」はエルジンのれっきとした自社製ムーヴメントです。


【21石のムーヴメント】

 17石ムーヴメントを四石ぶん上回るのが 21石ムーヴメントです。21石ムーヴメントもいくつかの型に分けることができます。

a. アンクル用、及びガンギ車用に、2個の穴石及び2個の受け石を使ったもの。17石ムーヴメント(17石の b.タイプ)に比べると、アンクル用受石2個、ガンギ車用受石2個が加わっています。

b. アンクル用、及びガンギ車用に、2個の穴石と1個の受け石を使い、香箱車用に2個の穴石を追加したもの。17石ムーヴメント(17石の b.タイプ)に比べると、アンクル用受石1個、ガンギ車用受石1個、香箱車用穴石2個が加わっています。

c. アンクル用に2個の穴石と1個の受け石、ガンギ車用に2個の穴石及び2個の受け石を使い、三番車と四番車に2個の穴石と1個の受け石を使ったもの。二番車の穴石は一個です。17石ムーヴメント(17石の b.タイプ)に比べると、アンクル用受石1個、ガンギ車用受石2個、三番車用受石1個、四番車用受石1個が加わり、日の裏側の二番車用穴石が省かれています。


 下の写真はアメリカ製の男性用21石手巻ムーヴメント、ブロバ「キャリバー10BM」(1952年)です。上に示したなかの c. タイプにあたり、三番車、四番車、ガンギ車用受石が裏蓋側に、アンクル用及びガンギ車用受石が日の裏側に装備されています。

 21石ムーヴメントにおいては、輪列の潤滑油がほぼ完全に守られています。潤滑油が失われなければ、摩擦抵抗の低減によって、計時の精度は向上し、部品の寿命も長くなります。21石の機械式ムーヴメントはハイ・ジュエル・ウォッチのなかでもとりわけ高級な機種といえます。


 Bulova 10BM 裏蓋側

 Bulova 10BM 日の裏側 筒カナを外して撮影


【22石のムーヴメント】

 アメリカ製ハミルトンには、22石ムーヴメントが見られます。下の写真は女性用の高級ライン「レイディ・ハミルトン」に搭載された22石ムーヴメント「キャリバー 757」です。21石の「ブロバ キャリバー 10BM」と比べると、二番車の日の裏側に穴石が追加されています。

Hamilton cal. 757 裏蓋側

Hamilton cal. 757 日の裏側

 筒カナを抜いたところ。二番車の日の裏側穴石が見えます。


【23石のムーヴメント】

 ブロバ社のムーヴメントには23石の機種があります。上に紹介した21石の「キャリバー 10BM」と比較すると、23石ムーヴメントには香箱真用穴石2個が追加されています。

 香箱真用に穴石を入れるのは、果たしてここまで必要なのかと思うほどの高級な作りで、スイスの最高級メーカーの製品にもまず見られない仕様です。たとえていえば、混雑する街なかの道を、ランボルギーニかポルシェに乗って平均時速20キロメートルで走るようなものです。スーパーカーで低速走行すると普通の乗用車の数倍のガソリンを食うのでもったいないですが、時計の場合は心おきなく贅沢を楽しめます。


 下の写真は1956年製「ブロバ キャリバー 5AD」です。女性用ムーヴメント「キャリバー 5AD」のなかでも、本品は宝飾時計に搭載されている23石、シックス(6)・アジャストメンツの最高級機です。


 Bulova 5AD 裏蓋側

 Bulova 5AD 裏蓋側 角穴車を外して撮影。

 Bulova 5AD 日の裏側


 機械式時計のムーヴメント(手巻ムーヴメント及び自動巻ムーヴメント)において、実質的な意味のある石数はこのあたりまでです。



【25石のムーヴメント】

 スイスのエボーシュ・メーカー、ア・シールド社の「キャリバー 1012」系ムーヴメント (A Schild cals. 1012, 1677, 1977, 1977-2) は5リーニュのトノー(樽)型ムーヴメントで、女性用アンティーク時計(ヴィンテージ時計)において最もよく目にするハイ・ジュエル・ムーヴメントのひとつです。筆者はおそらく同業者の誰よりも多く女性用アンティーク時計を見てきており、「ア・シールド キャリバー 1012」系ムーヴメントに関しても、これまでに数百個を手に取ってきました。しかしながらそのうちで「25石」であったのはただ一個、下の写真に写っている機械だけです。

 このムーヴメントはアメリカのバーマン時計会社 (Berman Watch Company, New York) という小さなメーカーが、宝飾時計用に制作したものです。フランス語で「エボーシュ」(ébauche) と呼ばれる半完成品をア・シールド社から買って、調速脱進機等とともに自社で石を入れ、超高級品に改造したのでしょう。

 Berman cal. 103 裏蓋側

 Berman cal. 103 日の裏側

 Berman cal. 103 日の裏側 筒車、筒カナ、日の裏車、裏押さえを外して撮影。


 上の写真を見ていただければわかりますが、この「バーマン キャリバー 103」は輪列のみならず、日の裏車用にも穴石を用いています。すなわち日の裏カナ用の真を地板ではなくカナに取り付けて、この真のための穴石を地板に埋め込んでいるのです。「バーマン キャリバー 103」の各部分に使われている石数を表にすると、次の通りです。


.. ... 石 数
日の裏側(地板側) .. 裏蓋側(受け側)
輪列 香箱真用 1 0
二番車の真用 1 1
三番車の真用 2 2
四番車の真用 1 2
ガンギ車の真用 2 2
.
アンクル アンクル真用 2 1
アンクルの爪用 2
.
天符 天真用 2 2
振り石 1
.
日の裏輪列 日の裏カナの真用 1 n/a



 ドレッシーなもの、カジュアルなものなど、時計の外見はさまざまですが、時計の良し悪しを決めているのは外見のデザインではなくて、機械の品質です。そもそも美しい時計でなければ所有したいと思えませんから、その意味でデザインは大切ですが、後述するピン・レヴァー・ウォッチのように安物のムーヴメントを使った時計は、長く愛用し続けることができません。



 ムーヴメントの石数を縦軸に、デザインの傾向を横軸にして、いくつかの機種の位置をイメージすると、下の図のようになります。縦軸の百分率 (%) は、それぞれの石数のムーヴメントに使われるルビーが、機械の性能を保つ上での必要性を何パーセント満たしているかを示します。





 これでお分かりいただけるように、時計の質、高級さは、外見的なデザインからはわかりません。上のグラフのL1, L2, M1のように、上質の時計がカジュアルなデザインの場合もあります。一方で後述のピン・レヴァー・ウォッチのように、いかにも高級そうに見えるドレッシーな時計が実は安物の場合もあります。

 上のグラフで例として挙げた時計は、以下の商品です。当店の商品はすべて上質の時計です。


 P1 コランバス 18サイズの大型懐中時計 瀬戸引文字盤にローマ数字 剣引式時刻合わせ ダスト・プルーフ・ケース 15石 アメリカ製

 P2 ウォルサム 12サイズ 《1894 コロニアル ロイヤル》 17石 アメリカ 1918年

 P3 リップ cal. 393 19石 1900年代頃 フランス製 Lip, c. 1900's, France

 M1 クライスラー Crysler , A Schild cal. 1194, 17 jewels 1950年代後半

 M2 ロード・エルジン 《ブラック・ナイト》 Lord Elgin "Black Knight" 21 jewels adj. 1953年 (写真左)

 M3 ブロバ プレジデント Bulova President cal. 10BM, 21 jewels 1952年

 L1 ベレア 赤色エマイユのグラデーションによる文字盤 スペース・エイジの女性用高級時計 Belair, FHF 69-2, 17 jewels, 1960年代

 L2 ブロバ Bulova cal. 6BC, 17 jewels 1953年

 L3 ブロバ dress watch in 14K white gold by Bulova, 23 jewels, 6 adj., 1956年





【ピン・レヴァー・ウォッチに関して気をつけるべきこと】

 以上の説明でお分かりいただけたと思いますが、ムーヴメントに部品として使われるルビーは、時計の精度と寿命に決定的な重要性を持ちます。ロスコフ脱進機を使った「ピン・レヴァー・ウォッチ」には、ふつうルビーが使われていませんが、そのような時計はすぐに駄目になります。数十年前に新品で売られていたときには安物なりの商品価値があったかもしれませんが、「アンティーク」(ヴィンテージ)のピン・レヴァー・ウォッチは「使い終わった使い捨て商品」であって、そのような品物に商品価値は残っていません。





 上の写真は1960年代頃のピン・レヴァー・ウォッチです。外見からは分かりませんが、裏蓋を開けてムーヴメントを見ると、ルビーが使われていないことがわかります。

 また、竜真(竜頭の心棒)を抜き差しするためのネジがありますが、他の箇所にはネジが見当たりません。この時計のムーヴメントは二度と分解できない方法で組み立てられているのです。ムーヴメントを分解できないということは、一切の修理や整備作業ができないということ、つまりこの時計が使い捨て商品であるということです。


 次の例はクラシカルで綺麗なデザインの懐中時計です。高級そうに見えますが、これもピン・レヴァー・ウォッチです。




 裏蓋を開けると、天符のところにルビーが見えます。またムーヴメントはネジ留めして組み立てられています。これらの特徴は、一見したところ、このページで最初に解説した7石のムーヴメントに似ています。エルジン「グレード 462」の写真でお分かりいただけるように、7石のムーヴメントはルビーが一個しか入っていないように見えます。それゆえ時計の仕組みを知らない人が、ルビーが一個だけ入ったムーヴメントを見れば、エルジン「グレード 462」と同等の品質であると思うかもしれません。





 しかしながらこのムーヴメントには、ルビーが本当に一個しか入っていません。ただ一個のルビーは、天符の裏蓋側の受け石として使われていますが、ここにルビーを一個だけ入れても、時計工学の観点からはまったく意味を為しません。このルビーは工学的に無意味な飾りでしかありません。

 天符のあたりを横から見れば、この時計がピン・レヴァー・ウォッチであることがよくわかります。脱進機の解説ページでロスコフ脱進機を搭載した例として取り上げたのは、この時計のムーヴメント (BF cal. 866) です。したがってムーヴメントをネジ留めで組み立てても、あまり意味がありません。修理や整備を繰り返して長く使える時計ではないからです。

 BF cal. 866


 さらに「7石」よりも「15石」が良く、「15石」よりも「17石」が良く、「17石」よりも「21石」が良いとなると、時計の仕組みを知らない人は、単純に「石数が多いほうが良い」と考えがちです。そのような錯誤、知識不足につけこんだ「17石のピン・レヴァー・ウォッチ」も作られています。調速脱進機を注意して見るとピン・レヴァー式であると見破れますし、コハゼ(角穴車の逆回転を防ぐラチェット)もピン・レヴァー・ウォッチに特有の簡単な作りですが、専門知識が無い人には見分けがつかないでしょう。

 「17石のピン・レヴァー・ウォッチ」に17個のルビーが使われているのが本当であっても、肝心の調速脱進機がピン・レヴァー式であるならば、他の箇所にルビーを入れる意味がありません。機械式時計の心臓部分である調速脱進機が、ピン・レヴァー・ウォッチの場合は速かに劣化するからです。


 17石のロスコフ式(ピン・レヴァー式)ムーヴメント


 時計は正確な知識に基づいて良質の品のみを扱う良心的な店で買うべきです。そうでないと購入費用が無駄になるばかりか、せっかく気に入ったデザインの時計を買っても、長く使えないという残念な結果に終わってしまいます。



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