ブロンズ製のセンター・メダルとクルシフィクス、及びアメシスト色のガラス・ビーズを使用した19世紀フランスのロザリオ。
クルシフィクスは高さ約3センチメートルと小さいサイズで、コルプスとクロスはブロンズを用いて一体成型されています。クロスは末端に向かって幅広になる装飾的なシルエットで、各末端に円形の飾り、交差部にミル打ち様の装飾が付いています。
センター・メダルは聖所の帳(とばり)を広げた形をしており、帳を縁取るフリンジやロープの一本一本までが丁寧に表されています。帳は頂部には聖母の冠を戴いており、たいへん特徴的なシルエットのセンター・メダルとなっています。
メダル中央に浮き彫りにされているのは、1830年にパリに出現した聖母です。無原罪の御宿りなる聖母は蛇を踏み付け、球体の上に立っています。両手の指輪からは恩寵の光が降り注いでいます。聖母の浮き彫りは身長約6.5ミリメートルと小さなサイズですが、胸や腹部の女性らしい丸みも、衣の襞も、巧みに表現されています。もう一方の面には十字架とMを組み合わせた聖母のモノグラムが彫られています。
ビーズはアメシスト色のガラスで出来ています。ヨーロッパ人は大航海時代にアメリカ大陸に進出し、南米でアメシストの大鉱脈を見つけましたが、それ以前の時代、アメシストはあらゆる宝石の中で最も高価なものでした。紫は皇帝や国王のように高貴な身分の人のみが身に着ける色であり、紫色のアメシストは他のどの宝石よりも珍重されたのです。このロザリオはアメシスト色のビーズを使うことにより、天の元后として戴冠した聖母を崇敬する気持ちを表しています。ビーズは19世紀のオリジナルですので、形が少しいびつです。
このロザリオは真正のアンティーク品であるにもかかわらず、優れて良好なコンディションです。特筆すべき問題はありません。