中世以来の聖母マリアの大巡礼地、ル・ピュイ=アン=ヴレの岩山「ル・ロシェ・コルネイユ」の頂上に、クリミア戦争(1853 - 1856年)で捕獲したロシア軍の大砲を融かして制作した高さ
16メートル、重さ 110トンの巨大な聖母子像、ノートル=ダム・ド・フランス(フランスの聖母)が建っています。この大型メダイは 1860年にノートル=ダム・ド・フランスが祝別された記念に鋳造されたものです。
メダイの片面には、小さな十字架で埋めた空間を背景に、ノートル=ダム・ド・フランスが浮き彫りにされています。無原罪の御宿りなる聖母は球体の上に蛇を踏みつけて立っており、聖母子が天にあることを示す雲が懸かった球体には、「1860年」(MDCCCLX) の年号がローマ数字で刻まれています。この年の9月12日、ル・ロシェ・コルネイユの頂上からル・ピュイの町を祝福する聖母子像、ノートル=ダム・ド・フランスの祝別式が行われました。このメダイには、帝国主義の時代であった19世紀半ば、聖母に平和を求める民衆の祈りが籠められています。聖母子像を取り囲むように、次の言葉がフランス語で書かれています。
Notre-Dame de France, priez pour nous. ノートル=ダム・ド・フランス(フランスの聖母)よ、我らのために祈りたまえ。
もう片方の面は中央に聖母の汚れ無き御心を配しています。聖母の心臓は悲しみの剣に刺し貫かれ、神とイエズスに対する愛に燃えています。また聖母の象徴である薔薇が心臓を取り巻いています。さらに心臓の両脇には白百合の花が配されています。「雅歌」2:2に出てくる「ゆりの花」は聖母の象徴とされます。「雅歌」2:2の内容は次の通りです。
Sicut lilium inter spinas, sic amica mea inter filias. (Nova Vulgata) おとめたちの中にいるわたしの恋人は 茨の中に咲きいでたゆりの花。
(新共同訳)
その周囲にフランス語で次のように書かれています。
Congrégation du Saint Cœur de Marie, Le Puy ル・ピュイ、マリアの御心信心会
このメダイはもともと彫りが深く優れた工芸品ですが、真正のアンティーク品であるにもかかわらず、摩耗も極めて少なく、たいへん良好なコンディションといえます。