(下) "H" を象(かたど)ったハミルトンのマークが、竜頭(りゅうず)にあしらわれています。




(下) ハミルトンの自社製手巻ムーヴメント「キャリバー 757」 22個のルビーを使用した最高級機です。















稀少品

ハミルトン 《バリ》 高級ドレス・ウォッチ 22石 adj.


ムーヴメントの種類: Hamilton cal. 757


10Kホワイト・ゴールド・フィルドのケース

白色文字盤に銀色の立体インデックス

銀色のアルファ型針


1962年



 1954年に発売された男性用時計のムーヴメント「キャリバー 770」は、ハミルトン社に「アメリカのパテック・フィリップ」(the "American Patek Philippe") という名声をもたらしました。美しい女性用ドレス・ウォッチである本品は、「ハミルトン キャリバー 770」のレディース・バージョンとも呼ぶべき「キャリバー 757」を搭載した名品です。かつてアメリカ合衆国の時計産業はスイス時計を凌ぐ品質で知られましたが、その到達点ともいえるのが、本品をはじめとする最終世代のアメリカ製ハミルトンです。


【ケース、文字盤、バンド】

 本モデルには「バリ」(Bali) というエキゾチックな名前が付いています。





 ケースは植物のような曲線によって左右非対称のシルエットを描きます。銀色のケースが放つ硬質の輝きが、優しく嫋(たおやか)な曲線に凛々しい表情を与え、上質の時間を紡ぎます。



 文字盤は白で、銀色の立体インデックスが植字されています。"12" と "6" がアラビア数字、2から5までが銀色の玉、7から11までがバー・インデックスと、変化に富む動的なデザインです。竜頭(りゅうず)の位置も個性的です。


 本モデル「バリ」の個性的な形を際立たせたかったので、上の写真では黒のコード・バンドでドレッシーに仕上げました。お好みにより、金属製バンドに変更可能です。




【ムーヴメント】

 この時計に搭載されているのは、ハミルトンの自社製手巻ムーヴメント(時計内部の機械)である「キャリバー 757」です。「キャリバー 757」は 1955年から 1961年まで生産された最高級機で、22個のルビーを使用しています。「キャリバー757」の大きさは一円硬貨よりもずっと小さな「21/0サイズ」ですが、振り子の役割をする「天符(てんぷ)」は一秒間に二往復半し(振動数 f = 18000 A/h)、十分な計時性能を確保しています。





 上の写真はこの時計に入っているムーヴメント、「ハミルトン キャリバー 757」です。赤く写っているのがルビーで、5個しか入っていないように見えますが、写真に写っていない文字盤下の地板やムーヴメントの内部に入っていたり、箇所によって二重に入っていたりして、全部で22個のルビ-が使われています。"22 JEWELS"(22石)と書かれているのは、この意味です。

 機械式時計(アンティーク時計)に使用されるルビーの役割を知るには、こちらをクリックしてください。また「ハミルトン キャリバー 757」に関する専門的な技術情報は、こちらをクリックしてください。


【この時計の歴史的位置付け】

 第二次世界大戦前の世界では、アメリカ、ヨーロッパ、日本が時計製造国でしたが、アメリカとヨーロッパを比較すると、アメリカの時計の品質は後者をはるかに凌いでいました。そのためスイス製の時計はアメリカ市場に食い込むことができませんでした。しかしながらアメリカの時計産業は太平洋戦争をきっかけに衰退してしまいます。1892年にペンシルヴェニア州ランカスターで創業し、数々の名作ムーヴメントを世に送り出したハミルトンも、1950年代頃からスイス製エボーシュを使い始め、1969年には自社工場でのムーヴメント生産を完全に停止します。




(上・参考画像) ハミルトンの広告 1940年代


 ムーヴメントの自社生産を止める十五年前の1954年、ハミルトンは名作と讃えられる男性用22石手巻ムーヴメント「キャリバー 770」を世に送り出しました。その翌1955年から生産が開始されたのが、「キャリバー 770」の女性版ともいえる22石手巻ムーヴメント「キャリバー 757」、すなわち本品です。

 「キャリバー 757」(1955 - 1961年)とその後継機「キャリバー761」(1961 - 1969年?)は、高温、低温、アイソクロニズム、五つの姿勢差に関するアジャストメントという驚異的な性能を誇ります。「キャリバー 770」、及び「キャリバー 757」と「キャリバー761」は、私にはハミルトンの「白鳥の歌」(Plato, "Phaedo" 84e - 85b,) と思えてなりません。


 アメリカの時計産業が衰退した歴史的経緯に関する解説は、こちらをクリックしてください。



【修理対応

 当店は数少ないアンティーク時計の修理対応店です。店主にはアンティーク時計に関する十分な専門知識があり、部品も豊富に揃っております。デリケートなイメージのアンティーク時計ですが、日常使用は十分に可能です。どうぞ安心してお買い上げください。


 下の写真はハミルトン「キャリバー 757」と互換性のあるパーツ用ムーヴメントの一部です。上段の四つは「キャリバー 757」そのもので、パーツ用ムーヴメントとはいえ、完動品です。

 念のために、パーツ用「キャリバー 750」の一部も写真に撮りました。下段の四つがそれです。「キャリバー 750」は「キャリバー 757」と同系統の17石手巻ムーヴメントです。22石の「キャリバー 757」と、17石の「キャリバー 750」を比べると、前者では三番車、四番車、ガンギ車に受石が追加されているのですが、「757」と「750」の歯車のホゾの先端を顕微鏡で見ると、すべて平坦なカット面を有します。すなわち「キャリバー 750」の輪列は、驚くべきことに、受石を追加した「キャリバー 757」にもそのまま使えるのです。





 下の写真には、本品「バリ」の専用クリスタル(風防)が入った未開封のパッケージ三点が写っています。変形クリスタルを採用した「バリ」のようなモデルの場合、専用クリスタルが無ければ交換はいっさい不可能です。50年以上前に販売されたモデルの専用クリスタルが、当店には豊富に在庫しています。






【おすすめポイント】

 どのようなモデルであれ、アンティーク時計、ヴィンテージ時計はまったく同じ物を見つけるのが困難です。それゆえ大抵のアンティーク時計は、現在では「一点もの」になっていると言えます。

 しかしながら多くの時計に接する専門業者の眼で見ると、ほとんどのモデルは「ありがち」なデザインです。時計は皆が必要とする必需品であり、流行のデザインに従って大量に供給される以上、同じようなデザインのものが多くなるのは仕方がないことといえます。

 ところが本品「バリ」は非常に珍しいデザインです。同業者の誰よりも多く女性用アンティーク時計を見てきたはずの私も、「バリ」を手にするのは本品が初めてです。ハミルトン「バリ」はそれほど珍しいモデルなのです。


 稀少性はアンティーク時計の魅力のひとつですが、このハミルトンは時計としての性能(ムーヴメントの性能)も非常に優れています。また珍しすぎて部品が手に入らず修理ができないのであれば困りものですが、当店には時計内部(ムーヴメント)の部品とともに、クリスタル(風防)も在庫しています。バンドもお選びいただけます。ハミルトン純正の可愛らしい箱も付けました。

 末永くご満足いただける高品質の商品であると自負しています。日々ご愛用いただける美しい実用品として、どうぞ安心してお買い上げくださいませ。



本体価格 126,000円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。

※ お支払いは、一括払い、分割払い、現金払い、ご来店時のクレジット払いと、さまざまな方法に柔軟に対応しております。遠慮なくご相談くださいませ。




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