ケースは奥行きが浅めです。本来このミサ典書用のケースではないのかもしれません。






天地及び小口が鍍金されています。




ページに乱れも無く、新品同様です。




表紙はくっきりと深く型押しされています。





巻頭の見返し。マーブル文様を印刷したものではなく、本物のマーブル紙が使われています。水面に絵具を流し、紙を浮かべて転写したもので、同じ文様は世界に二つとありません。





各ページを取り巻く挿絵には4種類のパターンがあり、いずれも「J. L. ブゾン」("J. L. Beuzon") の署名があります。「J. L. ブゾン」とは、ともに 1896年頃から 1935年頃にかけて活躍した画家の兄弟、ジョゼフ・ブゾン (Joseph Beuzon) とルイ・ブゾン (Louis Beuzon) が、共同で製作した作品に書き入れた名前です。


下の写真の左ページは、受難の象徴(十字架、槍、三本の釘、ローマ兵が王笏に擬してイエズスに持たせた葦、茨の冠)、イオタ・エータ・シグマ (IHS) の書かれた聖体と聖杯、キリストの象徴であるクリスモンすなわちロー (P) とキー (X) のモノグラム、クリスムの左右にキリストを象徴するアルファとオメガ、下の横帯中央に神の子羊(アグヌス・デイ)が描かれています。柱礎に "J. L. B." の署名があります。

下の写真の右ページは、聖霊、聖体容器、茨の冠、それぞれ聖体パンとワインの原料でありキリストの象徴でもある麦と葡萄、クリスム、命の水を飲む鳥が描かれています。鳥や動物が命の水を飲むモティーフは、ローマ時代において、異教徒、キリスト教徒を問わず墓室等の壁画にしばしば見られる楽園の描写です。柱礎に "J. L. B." の署名があります。





下の写真の右ページはミサ書の扉になっています。周囲を囲むブゾンのイラストは、イオタ・エータ・シグマ (IHS) の書かれた十字架、ラテン語で「ルーメン・ムンディー」(LUMAN MUNDI 「世の光」)との銘があるランプ、死に対する勝利を象徴するナツメヤシの葉、キリストの象徴である葡萄、クリスム形の十字架とアルファ・オメガの組み合わせが描かれています。孔雀は初期キリスト教美術において楽園の象徴として描かれることがあります。柱礎に "J. L. Bz." の署名があります。



上の写真の左ページはプラド美術館に収蔵されているムリリョの油絵、「アランフエスの無原罪の御宿り」(部分)を撮影し、セピア色のタイポグラヴュアで再現しています。 ムリリョは数多くの「無原罪の御宿り」を描いていますが、この作品は私が最も好きなもののひとつです。

【下】 参考画像 Bartolome Esteban Murillo, La Inmaculada de Aranjuez, 1650 - 60, oil on canvas, El Museo del Prado, Madrid





「無原罪の御宿り」のタイポグラヴュアは、アドルフ・ブラウン社 (Adolphe Braun et Cie) で製作された版を使用しています。タイポグラヴュア画面の左下に「写真 ブラウン パリおよびドルナッハ」(Photo Braun Paris et Dornach) と書かれています。ドルナッハはアルザス地域圏ミュルーズ(ミュールハウゼン)の地名です。

ちなみにゲーテアーヌムやシュタイナーの人智学協会本部があることで知られるドルナッハはスイスの町で、こことは別の場所です。




アドルフ・ブラウン社の創立者であるアドルフ・ブラウン (Adolphe Braun, 1812 - 1877) はブザンソン出身の写真家です。当初はテキスタイル・デザイナーでしたが、1850年代前半以降写真に関わるようになり、1855年のパリ万国博覧会で成功を収めてからは写真家に転じました。

アドルフ・ブラウン社は風景写真及び美術品の複製写真の大手出版社として業績を伸ばし、特に美術写真の分野ではアドルフ・ブラウン社の製品が業界の基準となりました。アドルフの没後、息子のガストン (Gaston Braun, 1845 - 1928) がアドルフ・ブラウン社を継ぎました。アドルフとガストンは、レジオン・ドヌール勲章を 1860年と 1892年にそれぞれ受けています。



下の写真はミサ典書の扉です。ここに書かれている内容は次の通りです。


新しい祈祷書

 ミサ通常文、結婚のミサ、埋葬のミサ、諸祝日の固有ミサ、福音書の引用、晩課等を収録 

教皇庁による近年のミサ改定に対応


トゥルンハウト(ベルギー)

ブレポル社

創業 1797年

教皇庁御用達印刷出版業者







下の写真の左ページに、出版許可の日付が 1929年8月10日と書かれています。

右ページに書かれているのは、教皇ピウス10世がブレポル社に「教皇庁御用達出版業者」(Editeurs Pontificaux) と名乗る許可を与えたという内容の、1905年12月26日付文書の写しです。





下の左ページは、家族内の出来事を記録する場所ですが、使われていません。周囲を囲むブゾンのイラストでは、吊り香炉から立ち上る香の煙が、イオタ・エータ・シグマ (IHS) の書かれた布の上の聖体顕示台に達しています。下の横帯中央の天使は、ラテン語で「ウェニーテ・アドーレームス」(VENITE ADOREMUS 「拝しに来たれ」)との文字が書かれたバンドロールを手にしています。また天使の周囲は薔薇で埋められていますが、薔薇はキリスト受難の象徴です。柱礎に "J. L. Beuzon" の署名があります。

下の右ページは移動祝祭日の早見表で、1930年から1941年までのぶんが掲載されています。





巻末の見返し。こちらも本物のマーブル紙が使われています。





裏表紙には型押しがありません。









Nouveau Missel Romain  (no. 850)

contenant l'ordinaire de la s. messe, les messes de mariage et d'enterrement, le propre des fêtes, les ss. évangiles, les vepres, etc.

mis en harmonie avec les dernieres réformes pontificales.


Établissements Brepols, S. A, Imprimeurs-Éditeurs Pontificaux, Turnhout


IMPRIMATUR Mechliniae, 10 Augusti 1929. J. Thys, can. lib. cens.




新しい祈祷書


トゥルンハウト、ブレポル社 1929年

縦横 12 x 9 cm   厚さ 2.5 cm  457 ページ



 総革装に深く型押しした美しいミサ書。天地及び小口に金を施し、巻頭及び巻末の見返しには本物のマーブル紙を使った贅沢な装丁です。80年以上前のものですが、ケースに入っていたせいか、新品同様と言ってよいコンディションです。





本体価格 15,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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