テラック作 《ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド》 優しい御母と救世主の愛 柔らかな浮き彫りによるマルセイユのメダイ 直径 18.7 mm


突出部分を除く直径 18.7 mm

フランス  1920 - 30年代



 一方の面にはマルセイユの守護の聖母ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド、もう一方の面にはイエスとその聖心をそれぞれ浮き彫りにしたメダイ。いずれの面もたいへん良好な保存状態です。





 一方の面には、マルセイユの象徴、バジリク・ノートル=ダム=ド=ラ=ガルドの鐘楼頂上にそびえ、「ラ・ボンヌ・メール」(優しい聖母さま)として市民に親しまれる聖母子の巨像、ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド(守護の聖母)が浮き彫りにされています。

 ノートル=ダム・ド・ラ・ガルドはウジェーヌ=ルイ・ルケーヌ(Eugène-Louis Lequesne, 1815 - 1887)の作品に基づく聖母子像で、銅に金めっきが施されています。像は 1870年夏に完成し、同年九月二十四日に祝別されました。





 ノートル=ダム・ド・ラ・ガルドの聖母は戴冠し、左胸の前に抱いた幼子イエスこそが救い主キリストであることを人々に示しています。聖母子の周囲には、優しい守護の聖母に執り成しを祈る言葉がフランス語で書かれています。大文字の "U" のかわりに "V" を使うのは、クラシカルなラテン語式の表記です。

  Notre-Dame de la Garde, priez pour nous.  ノートル=ダム・ド・ラ・ガルドよ、我らのために祈り給え。

 本品の浮き彫りにはメダユール(メダイユ彫刻家)のサインがありませんが、同一の図柄による他のメダイとの比較から、テラック(Tairac)の作品であることが分かります。テラックは 1920年代頃を中心に活躍したフランスのメダイユ彫刻家で、丁寧な彫りによる柔らかなタッチの作風が特徴です。聖母子像ノートル=ダム・ド・ラ・ガルドの浮き彫りも、聖母の女性らしい体の丸み、イエスの幼児らしい愛らしい顔立ちに、テラックの作品群を貫く親しみやすい作風がよく表れています。





 近代思想が力を得て、カトリック教会が危機感を募らせた十九世紀後半は、あたかも近代思想に立ち向かうかのような力強い聖母子の巨像が、フランス各地に建立された時代でした。ノートル=ダム・ド・ラ・ガルドが祝別されたのは 1870年です。またル・ピュイ=アン=ヴレ(オーヴェルニュ)にある高さ十六メートルの聖母像ノートル=ダム・ド・フランスの祝別は 1860年に行われました。美しく強い聖母は「ヨハネの黙示録」十二章において竜と戦う女性であり、まさに「ノートル=ダム・ド・ラ・ガルド」(守護の聖母)の名にふさわしい姿です。





 上の写真に写っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。聖母子の顔の各部や手、髪、聖母の冠に見られる装飾などの細部は、いずれも一ミリメートル以下の極小サイズにもかかわらず、大型の浮き彫り彫刻に劣らない正確さで造形されています。





 もう一方の面には聖心を示すイエス・キリストが浮き彫りにされています。キリストは衣の前をはだけ、愛に燃える聖心を左手で示し、右手で祝福の仕草をしています。キリストの両手には釘を打ち込まれた痛々しい傷跡があります。





 上の写真に写っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。キリスト像は顔立ちが丁寧に彫られているのみならず、手の形も実際の人体そのままの正確さで表現されています。茨に囲まれた聖心からは、血が滴っています。肉眼で見ても気づかない細部が、どこまでも正確に彫り込まれています。




(上・参考画像) キリストに身を投げかける悔悛のガリア。背景は 1914年9月4日のドイツ軍による空襲で炎上するランス司教座聖堂ノートル=ダム。当店の商品。


 十九世紀後半以来、フランスでは「悔悛のガリア」の運動が盛んに行われていました。信仰深い人たちにとって、フランス革命とコミューンの内戦による荒廃、普仏戦争での敗戦、第一次大戦による荒廃は、マルグリット=マリを介して示された聖心の啓示をフランスが無視した報いと思われたのです。

 本品は第一次大戦が終わってあまり時間が経たない頃に制作されました。第一次世界大戦ではフランスの国土全体が戦場となり、軍人軍属の戦死者のみならず、無数の戦災死者、戦争寡婦、戦争孤児を出しました。その荒廃からフランスがいまだ立ち直りきれず、戦争の記憶も生々しい時期に制作されたこのメダイには、聖心を示すイエス・キリストの前に身を投げ出して神の愛に縋(すが)ろうとする当時のフランスの人々、「悔悛のガリア」の祈りが籠められています。





 上の写真は本品を男性店主の手に乗せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真よりもひと回り大きなサイズに感じられます。





 本品は百年近く前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にも関わらず、たいへん良好な保存状態です。大きな商品写真は実物を極端に拡大しているため、突出部分の磨滅が判別可能です。しかしながら本品を肉眼でご覧いただくと、軽度の磨滅による優しい丸みが聖母の優しさと調和して、時が仕上げた美しいアンティーク・メダイユとなっています。





本体価格 11,800円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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