稀少な名品 リュドヴィク・ペナン作 汚れなき御心を示す聖母 美術品水準の大型メダイ 直径 32.5 mm


突出部分を除く直径 32.5 mm  最大の厚さ 3.5 mm  重量 13.0 g

フランス  1850 - 60年代



 「マーテル・ドローローサ」(MATER DOLOROSA ラテン語で「悲しみの聖母」の意)を立体的な浮き彫りで表したブロンズ製メダイ。直径 32ミリメートルを超える大きなサイズです。重量は 13グラムで、五百円硬貨二枚分弱、あるいは百円硬貨三枚分弱に相当します。

 本品は高名なカトリック彫刻家リュドヴィク・ペナンの作品ですが、「名品」としたのは単に有名な彫刻家の作品であるからではなく、ペナンによる数々の作品のなかでも、本品の芸術性が群を抜いているからです。





 メダイの片面には、カドリロブ(仏 quadrilobe 四つ葉形)と正方形を組み合わせたゴシック風の枠内に、悲しみの聖母の半身が大きく浮き彫りにされています。聖母の背景は小さな星で埋められています。

 聖母がまとう飾り気の無い衣は、修道衣にも似ています。ヴェールの端からは髪が覗いていますが、このヴェールも花嫁のもののように軽やかではありません。聖母の胸には神とイエスへの愛に燃える聖母の心臓が眩い光輝を発していますが、この心臓は悲しみの剣に刺し貫かれています。


 聖母が両腕を開いて前に出しているのは、祈りの姿勢です。聖母の眼差しが天に向けられていることからも、聖母が神と対話していることがわかります。聖母は数々の悲しみに心を刺し貫かれ、「神よ、なぜですか」と問いかけつつも、信仰を失わないために、神との対話に耽っています。

 本品の浮き彫りは極めて立体的であり、じっと眺めていると、生身の聖母を見るかのような錯覚に陥ります。本品の聖母は広げた両腕を前に差し出していますが、両手はゴシックの枠から手前にはみ出しています。メダイを観る者に向かって両手を広げる様子は、神に祈ると同時に、罪びとに手を差し伸べているようにも見えます。聖母はイエスを愛するゆえに、その心は十字架上にてイエスと共に受難し、イエスと共に罪びとを招いておられます。リュドヴィク・ペナンは聖母の手を枠からはみ出させ、いわばメダイの鑑賞者と同じ空間に置くことによって、聖母の悲しみを実感し易くするとともに、メダイの鑑賞者に対し、聖母と共に神に祈ることを勧めています。





 もう一方の面には、ゴシックの枠に内接して円形の枠を配し、数十個の星で取り囲んでいます。円形枠の内側には「アウスピケ・マリアエ」(AUSPICE MARIAE ラテン語で「マリアの庇護の下に」)を表すモノグラム、"AM" が彫られています。メダイの下部、円形枠の外側には、「ルドヴィクス・ペナン、ルグドゥーネーンシス」(LUDOVICUS PENIN, LUGDUNENSIS ラテン語で「リヨンのリュドヴィク・ペナン」の意)のサインがあります。

 リュドヴィク・ペナン (Ludovic Penin, 1830 - 1868) は優れた才能の芸術家で、弱冠34歳であった1864年、当時の教皇ピウス9世により、「グラヴール・ポンティフィカル」 (graveur pontifical)、すなわちカトリック教会の公式メダイユ彫刻家に任じられましたが、惜しくもその四年後に亡くなってしまいました。





 十九世紀初頭のフランスにおけるメダイユ彫刻は新古典主義の時代にふさわしく、幾分硬直した作風のものが多く見られます。しかしながらロマン主義の時代に入ると、メダイユ彫刻は人物像を自然かつ活き活きと表現するようになります。いかにも19世紀らしいロマン主義的メダイユ彫刻を始めたのはダヴィッド・ダンジェ (Pierre-Jean David d'Angers, 1788 - 1856) ですが、リュドヴィク・ペナンはダヴィッドよりも少し後の時代の人であり、信心具彫刻の保守的な世界にあって、ダヴィッド・ダンジェと同様の仕事を成し遂げました。それ以前の時代には常に様式化した表現に拠っていたキリストや聖母、諸聖人のメダイユ彫刻に、リュドヴィク・ペナンは生命の息吹を吹き込んで躍動させたのです。しかし「グラヴール・ポンティフィカル」であったペナンの仕事は、聖人たちの姿を活き活きと表現するにとどまらず、キリストやマリア、聖人たちを鑑賞者の身近に感じさせることにより、信心具に必要な要件である「信仰を勧め、回心を惹き起こす力」をメダイユに与えました。

 当時としては先進的であったリュドヴィク・ペナンによる作品であっても、二十一世紀の現代人から見るならば、すべてが新鮮に見えるわけでもないのは当然のことです。しかしながら本品のマリア像はペナンの作品のなかでも際立って美しく、現代人の心にも強く働きかけます。メダイユ彫刻は十九世紀のフランスにおいて極度に発達しましたが、フランスのメダイユ彫刻を高山に譬えるならば、本品はその頂上において天に近づき、久遠(くおん)の美と触れ合った類い稀な作例です。





 十九世紀のフランスでは打刻によるメダイが盛んに作られました。しかしながら本品は打刻して作られたのではなく、本格的な芸術作品として鋳造されています。上の写真は一般的な作りの十九世紀のメダイ二点を本品の上に載せて撮影し、全体的なサイズと厚み、浮き彫り彫刻の立体性や作りの丁寧さを本品と比較しています。手前にあるのはトゥールの聖マルタンのメダイ (サイズ 20.2 x 13.8 mm)、奥にあるのはヌルシアの聖ベネディクトゥスのメダイ (サイズ 19.8 x 14.3 mm)です。





 リュドヴィク・ペナンは短い生涯に多くの作品を遺した彫刻家で、筆者(広川)はペナンの作品をこれまでに数多く目にしていますが、本品のマリア像は非常に優れた作例で、最高の評価に値します。ペナンによる浮き彫りは、さまざまな年代のメダイに同じ作品が繰り返し採用された例が多く見られますが、本品はおよそ百五十年前にただ一度だけ制作された作品です。鋳造された数も少なく、本品のマリアと同じものを、私はこれまでに一度も見たことがありません。

 古い年代にかかわらず、本品の保存状態は極めて良好です。特筆すべき問題は何もありません。





本体価格 35,800円 販売終了 SOLD

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