およそ九十年前のフランスで制作された美麗な銀無垢メダイ。十代半ばの少女マリアの横顔を浮き彫りにし、青色ガラスのエマイユを掛けています。裏面に
1928年の日付が刻まれています。
表(おもて)面には若きマリアの柔和な横顔を浮き彫りで表します。天使ガブリエルから受胎を告知されたマリアは、「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。」と答えてすべてを神に委ねました。このときマリアはごく若い少女であったにもかかわらず、救い主を産むという大任を告げられた後の表情には、神への絶対的な信頼が読み取れます。
上の写真に写っている定規のひと目盛は 1ミリメートルです。目、鼻、口はいずれも 1ミリメートル以下のサイズですが、若きマリアの顔立ちはよく整い、無条件の信仰という不可視の価値が、表情のなかに形象化されています。
メダイの外周部分には不規則な連続模様が美しく造形され、青色エマイユで被われています。メダイの左下、時計で言えば七時あたりに表層の剥落があり、青色が少し明るく見えます。この箇所に銀の露出は無く、強い衝撃を与えない限り、この剥落が拡大することもありません。
メダイの裏面には、流麗な字体で「クリスティアーヌ 1928年 1月 4日」と手彫りされています。銀無垢の上にエマイユを施した本品は、一般的なメダイにに比べてはるかに高価で、人生の記念すべき出来事に際して購入されるものでした。本品は、クリスティアーヌという女の子が、1928年
1月 4日に洗礼あるいは初聖体を受けたことを記念しています。
フランスにおいて 800シルバー製を示す「蟹」のポワンソン(ホールマーク)が、上部の環に刻印されています。
本品は古い制作年代にもかかわらず良好な保存状態です。エマイユ表層に部分的な剥落がありますが、銀は露出していません。数ある聖母のエマイユ掛けメダイのなかでも、とりわけ美麗な作品のひとつです。