「ルルドの聖母」をテーマに制作された八角形のメダイ。
表(おもて)面は直径 10ミリメートルの画面に、ノートル=ダム・ド・ルルド(Notre-Dame de Lourdes ルルドの聖母)の横顔を浮き彫りにしています。聖母の浮き彫りを囲む縁が完全な円であることをはじめ、メダイ全体の意匠はアール・デコ様式に基づき、幾何学的パターンを多用しています。
裏面は聖母出現の様子を再現しています。岩場に出現したマリアは右手にロザリオを掛け、胸の前に両手を合わせて、「わたしは無原罪の御宿りです」と名乗っています。ベルナデットは祈りを象徴するヴェールを被り、ろうそくを手に跪いています。
上の写真に写っている定規のひと目盛は 1ミリメートルです。聖母の顔は磨滅していますが、ベルナデットを見ていただければ、頭部の直径は 1ミリメートルに満たないこと、目鼻口が表されているばかりか、聖母を見上げる敬虔な表情までもが、メダイユ彫刻家の人間離れした技術によって、あたかも生身の少女を眼前に見るかのように再現されていることがお分かりいただけます。
本品は表が「聖母の横顔」、裏が「出現の光景」といずれもスタンダードな図柄ですが、メダイ全体のシルエットは極めて特徴的です。裏面の浮き彫りは、メダイユ彫刻が極度に発達したフランスならではの細密さで制作されています。
写真ではあまり綺麗に見えませんが、実物には均一で美しいパティナ(古色)があって、突出部分の金属光沢を引き立てています。八十年以上前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、古い年代にもかかわらず保存状態は良好です。特筆すべき問題は何もありません。