ジャン=バティスト・エミール・ドロプシ (Jean-Baptiste Émile Dropsy, 1848 - 1923) によるルルドの聖母のメダイ。エミール・ドロプシはフランスが生んだ最も優れたメダイ彫刻家のひとりです。
表(おもて)面には斜め前から捉えたマリアの肖像を浮き彫りにしています。ルルドのメダイに表される聖母はほとんどの場合が横顔で、このような角度の作例はきわめて稀です。聖母の左肩あたりに彫刻家のサイン
(É. Dropsy) が刻まれています。また800シルバー(純度80パーセントのシルバー)を示すフランスのホールマーク(イノシシの頭)、及びフランスの銀製品工房のマークが、上部の環に刻印されています。
裏面にはマサビエルの洞窟における聖母出現の様子を浮き彫りにしています。岩の窪みに現れた聖母は右手首に15連のロザリオを掛けて胸の前に手を合わせ、名を問うベルナデットに対して「我は無原罪の御宿りなり」と答えています。聖母を見上げるベルナデットの手首にはロザリオが掛けられています。
本品は古い制作年代にもかかわらず、概(おおむ)ね良好なコンディションで残っています。表面の摩耗がメダイに優しい表情を与えています。