デシデリウス修道士による大型メダイ 《聖ベネディクトゥス生誕千四百年記念 モンテ・カッシーノ 1880年》 重厚なブロンズ製 直径 36.0 mm 厚さ 4.1 mm 重量 18.9 g


突出部分を除く直径 36.0 mm  最大の厚さ 4.1 mm

重量 18.9 g


フランスまたはイタリア  二十世紀中頃



 ボイロン修道院でデザインされた聖ベネディクトゥスのメダイ。





 ボイロン(Beuron)は南ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州にあり、スイスとの国境に近い町です。1863年、この町にベネディクト会大修道院ザンクト・マルティン(独 Erzabtei St. Martin 羅Archiabbatia Sancti Martini Beuronensis)が創設されました。ペーター・レンツ(Peter Lenz, 1832 - 1928)はボイロンから北西に少し離れた町ハイガーロッホ(Haigerloch バーデン=ヴュルテンベルク州)出身の芸術家でしたが、キリスト教美術の研究を通じて信仰心を強め、1872年にベネディクト会士となりました。ベネディクト会士となったレンツは、修道名デシデリウスを名乗りました。本品の意匠は、1880年にデシデリウス修道士が考案したものです。





 メダイの一方の面には、右手に十字架、左手にベネディクト会則を持って修道院の入り口に立つヌルシアの聖ベネディクトゥスが、メダイの天地いっぱいに浮き彫りにされています。聖人の左右にまたがって、「クルクス・サンクティー・パトリス・ベネディクティー」(CRUX SANCTI PATRIS BENEDICTI ラテン語で「聖なる師父ベネディクトゥスの十字架」の意)の文字、聖人の足元には「エクス・サンクトー・モンテ・カシーノ 1880」(EX SANCTO MONTE CASINO MDCCCLXXX ラテン語で「1880年 聖なるカシヌス山より」の意)の文字が刻まれています。足元の句は、モンテ・カッシーノ修道院を創設した聖ベネディクトゥスの生誕千四百年を記念して、本品の意匠が 1880年に考案されたことを示します。





 聖人の右側(向かって左側)には飲み物の盃から這い出す蛇が、聖人の左側(向かって右側)にはパンを咥えたカラスが、それぞれ刻まれています。

 レゲンダ・アウレアによると、フロレンティヌスという司祭が聖人を妬んでパンに毒を入れましたが、これを悟った聖人はカラスに命じ、毒入りパンを誰もいないところに捨ててこさせました。カラスは鋭い視覚を有するゆえに、優れた洞察力を象徴します。また八咫烏(やたがらす)の例に見るように、カラスはプシコポンプス(希 ψυχοπομπóς 魂の導き手)でもあります。プシコポンプスとしてのカラスは、死にゆく者の守護聖人である聖ベネディクトゥス自身と重なり合います。

 同じくレゲンダ・アウレアによると、ある男が聖人に二本のワインを贈りましたが、ワインを運んだ別の男はそのうちの一本を隠し、一本だけを聖人に渡しました。聖人は礼を言って、隠したワインを飲まないように男に忠告しました。男は恥じて退出しましたが、隠したワインを調べると、毒蛇が入っていました。毒蛇は言うまでもなくエヴァを誘惑した悪魔(「創世記」 3: 1 - 7)を意味し、原罪の象徴でもあります。





 これらの浮き彫りを取り囲むように、「彼の臨在により、臨終に際して我らが強められんことを」(EIUS IN OBITU PRAESENTIA MUNIAMUR.)とのラテン語の銘が金文字で刻まれています。この銘は、聖ベネディクトゥスが安らかな死の守護聖人であることを示しています。





 もう一方の面は十字架のシルエットを浮き彫りにし、さまざまな言葉がイニシアルによって刻まれています。最上部に書かれた三文字「パクス」(PAX)は、ラテン語で「平和」のことです。他の文字が何を表すのか謎でしたが、1415年に書かれた写本が1647年にバイエルンのメッテン修道院で発見され、その意味が明らかになりました。





 十字架上のイニシアル九文字は「聖なる十字架が我が光であるように。竜(悪魔)が我が導き手となることが決して無きように。」(羅 CRUX SACRA SIT MIHI LUX. NUNQUAM DRACO SIT MIHI DUX.)を表し、周囲のイニシアルは「退けサタン。虚しき事で我を誘うな。汝が我に与うるは悪しき物なり。汝自身が毒を飲め。」(羅 VADE RETRO SATANA. NUNQUAM SUADE MIHI VANA. SUNT MALA QUAE LIBAS. IPSE VENENA BIBAS.)を表します。四文字のイニシアル「ケー・エス・ペー・ベー」(C. S. P. B. ラテン語読み)は、「クルクス・サンクティー・パトリス・ベネディクティー」(CRUX SANCTI PATRIS BENEDICTI)、すなわち「聖なる師父ベネディクトゥスの十字架」を意味します。





 本品は聖ベネディクトゥスの生誕千四百周年を記念するために、デシデリウス修道士が考案した意匠に基づきます。それ以前の意匠と並んで、聖ベネディクトゥスのメダイとしてはよく知られた意匠ですが、本品は類品と比べて格段に大きく、筆者(広川)がこれまで目にしたなかで最大の作例です。

 本品の直径は三十六ミリメートルで、およそ四ミリメートルの厚さがあります。十八・九グラムの重量は百円硬貨四枚分に相当し、手の取ると心地良い重みを感じます。このような物理的重量感に加えて、ブロンズの鈍い輝き、西ヨーロッパ教会史が有する千数百年の精神的重みが、本品に一層の重厚感を与えています。

 本品は突出部分に軽度の摩滅が認められますが、充分に良好な保存状態です。特筆すべき問題は何もありません。上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になると、写真よりも一回り大きく感じられます。





本体価格 18,800円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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