稀少品 《イエスの子ら会》 《少女を守る守護天使》 ゴシック様式によるアンティーク・メダイ 直径 26.0 mm


突出部分を除く直径  26.0 mm

最大の厚さ  3.1 mm


重量 7.2 g


フランス  十九世紀中頃または後半



 「イエスの子ら会」(la Congrégation des Enfants de Jésus)の稀少なメダイ。ブロンズを使用し、十九世紀半ばから後半のフランスで制作された作品です。写真では分かりませんが、実物には黒光りする古色と美しい艶があり、たいへん重厚な趣きです。手に載せて撮影している最後の写真が実物に近い色です。





 一方の面は幼子イエスの立ち姿を、立体的な浮き彫りで天地いっぱいに刻んでいます。幼子は聖堂内の龕(がん 像を安置する壁面の窪み)を思わせる台座に立っていますが、生命を持たない像のようではなく、姿勢も表情も活き活きとしています。幼子は右腕を伸ばし、掌を前に向けて罪びとを招き、小さな体に抱き留めようとしています。

 メダイに表される幼子イエスは「サルヴァートル・ムンディー」(SALVATOR MUNDI ラテン語で「世界の救済者」「世の救い主」の意)、すなわち全宇宙の支配権を象徴する「グロブス・クルーキゲル」(GLOBUS CRUCIGER 世界球、ラテン語で「十字架付の球体」の意)を左手に持ち、右手で天を指さす威厳ある姿で表されることが多くあります。しかしながら本品の幼子は愛らしい顔に微笑みを浮かべ、あくまでも親しみやすい姿に造形されています。





 イエスに限らず、幼い子供は生命の象徴です。幼いながらもしっかりとした体つきのイエスは、滅びることのない永遠の生命を象徴します。

 一方、幼子が左手に持つ十字架は本来恐ろしい刑具であり、罪がもたらす死を象徴します。しかしながら本品の浮き彫りにおいて十字架はごく細く表現されています。細い十字架は死の敗北を表すとともに、本来死の象徴であったものが、イエスにおいて充溢する生命に取り込まれることで、救いの象徴に転化しています。

 幼子イエスの浮彫は、右足に体重をかけ、左の膝を前に出したコントラポスト(伊 contraposto)の姿勢で表されています。動きが潜在するコントラポストの姿勢は、幼子の活き活きとした表情とともに、イエスが分け与え給う生命を視覚化しています。





 美しい衣文(えもん 流れるような襞)を描く衣の裾は、柔らかな風になぶられています。

 ヨーロッパにおいて、春はゼピュロス(希 Ζέφυρος 西風)が運んで来ると考えられました。ボッティチェリの「春」は、花の女神フローラがゼピュロスに襲われて、口から花が咲きこぼれる様子を描いています。わが国において、春は東風(こち)が運んでくると考えられました。熱田神宮の東門は戦災で焼失しましたが、この門は春敲門(しゅんこうもん)といいいました。春をもたらす東風が敲(たた)く門、という意味です。皇太子の御所は内裏の東に在って東宮(とうぐう)といいますが、これを「春宮」と書くようになったのも、東が春の方角と考えられたことによります。

 「ヨハネによる福音書」一章において、イエスは光に譬えられています。古代地中海世界において、冬至に行われた太陽神ミトラ復活の祝祭は、義の太陽であるイエスの降誕祭に取って代わられました。それゆえイエスが齎(もたら)し給う救いは、再生した太陽が齎す春に譬えられます。幼子イエスの衣をなぶる優しい風は、厳しい冬が過ぎた後、生命をもたらす春風です。





 幼子は十字架またはフルール・ド・リスを散らしたように見えるパターンを背景に、カドリロブ(仏 quadrilobes 四つ葉型)の枠で囲まれています。枠は縦方向の両端が尖り、マンドルラ(伊 mandorla)に似た形となっています。枠の内縁はミル打ちを模した連続する点で装飾されています。

 「コングレガシオン・デ・ザンファン・ド・ジェジュ」(仏 Congrégation des Enfants de Jésus イエスの子ら会)の文字が、ゴシック体のフランス語で枠の外側に刻まれています。





 上の写真に写っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。正確に彫られた幼子の表情、美しい衣文、全ての指の関節まで描き出した手は、メダイユ芸術の国フランスならではの仕上がりです。





 メダイのもう一方の面には、カドリロブと正方形の組み合わせでゴシックの刳り型を模し、直径十九ミリメートル弱の円形画面を中央に設けます。円形画面には、幼子イエスの浮き彫りと同じパターンを背景にして、幼い少女が祈る姿と、少女を守り導く守護天使を浮き彫りにしています。円形画面はミル打ち様(よう)パターンに縁取られ、カドリロブとの間を唐草模様で埋めています。





 もう一方の面に彫られた幼子イエスと同様に、この面の少女と天使も優れた仕上がりです。本品はいずれの面の意匠も子供を浮き彫りにして愛らしいですが、メダイのサイズは思いのほか大きく、五百円硬貨に近い直径に、五百円硬貨のおよそ一・五倍の厚みがあります。重量も五百円硬貨より少し大きく、手に取ると心地良い重みを感じます。メダイの実物は美しいパティナ(古色)に被われ、商品写真で見るよりもはるかに重厚です。





 十九世紀のフランスは、現代人には想像できないほど宗教色が強い社会でした。人々は教会暦に従って生活し、各種信心会に入る人も多くいました。子どもの信心会で有力であったのは、聖心会のマドレーヌ=ソフィ・バラが設立した「マリアの子ら会」(マリア会 la Congrégation des Enfants de Marie)で、少女を対象としていました。

 「マリアの子ら会」のメダイはこれまでに当店でも扱っています。しかるに本品は「イエスの子ら会」(la Congrégation des Enfants de Jésus)のメダイです。筆者(広川)は長年に亙ってフランスのメダイを扱ってきましたが、「イエスの子ら会」のメダイを目にするのは初めてで、たいへん稀少な作例といえます。





 上の写真に写っている定規のひと目盛りは、一ミリメートルです。ふたりの人物は目鼻や髪の毛がきちんと彫られ、天使の翼にも羽毛が表現されています。天使の衣文(衣の襞)や雲の凹凸、女の子の子供らしいスカートや体形も巧みに表現されています。





 上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。女性が本品の実物をご覧になれば、写真よりも一回り大きなサイズに感じられます。

 本品は百数十年前のフランスで制作された真正のアンティーク品ですが、古い品物にもかかわらず、保存状態は良好です。幼子イエスの頭部は本品の浮き彫りで最も突出しており、軽度の摩滅が認められますが、目、鼻、口は十分に原状を留めています。本品の実物は均一のパティナに被われ、美しい光沢を有します。掌に載せた写真は現物の質感に近く、お買い上げいただいた方には必ずご満足いただけます。





本体価格 18,800円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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