ヴィンテージ・デッドストック品 《金色のハイ(小) へブル文字による生命のペンダント》 12 x 10 mm フランス 1970年頃


外付けの環を除くペンダントのサイズ 12 x 10 mm



 へブル語ハイ(חי)をモティーフにしたペンダント。スターリング・シルバー製ペンダントの色違いです。ホールマークは見当たりませんが、おそらくヴェルメイユ(仏 vermeil 銀に金めっきをかけたもの)と思われます。表裏は同様の丁寧さで仕上げられています。

 ハイは「生きる」という意味の動詞、あるいは「生きている」という意味の形容詞です。昔の横書き日本語と同様、ヘブル語を始めとするセム語は右から左に書きます。ハイ(חי)は右から左にヘト(ח chet, het)とヨッド(י yodd)を並べており、ラテン文字では haï あるいは chai のように表記されます。ラテン文字イ(i)の上の ¨ は、分離記号(トレマ)です。





 イスラム教が人像表現を厳しく禁じることは周知の事実ですが、ユダヤ教でも同様に、宗教に関する図像は厳しく規制されます。預言書は預言者が幻視する神の姿を記録し、詩篇においても神の表象は多様な比喩で表現されます。しかしながら神の姿が図像に描かれることは決してありません。その一方でユダヤ文化は図像の欠落を補うように、言葉と文字による象徴表現を発達させました。

 新プラトン主義はあらゆる有(羅 ENS 存在する物)を神からの流出で説明します。中世スペインのカバラ思想において、へブル文字ハイは神から流出する形而上的有の末端であり、可感的諸事物に最も近いとされました。それゆえハイは生命の象徴であり、宗教的文脈においては「申命記」三十章十九節と二十節に基づき、霊において生きていること、すなわち神の目からみて正しく生きている状態の象徴と考えられました。

 ハイは神が嘉(よみ)し給うユダヤ的生き方を象徴するゆえに、十八世紀の東欧において、ユダヤ人たちはこのへブル文字を護符のように身に着け始めました。生命を表すハイはたいへん好ましい言葉であるゆえに、ユダヤの人名にも使われます。筆者(広川)は高校生の時にペンギン・ブックスで「イン・ザ・ビギニング」(In the Beginning, 1975)という自伝的小説を読んで、ユダヤ文明と旧約聖書、高等批評、ユダヤ近現代史等に興味を持ちました。この本の著者はハイム・ポトック(Chaim Potok, 1929 - 2002)という人で、ハイムという男性名もハイに由来します。ハイム・ポトックはアメリカの作家ですが、この人のギヴン・ネイムは現代英語においてもチェイムやカイムではなくて、ハイムと発音します。このことは近所のシナゴーグで読書家のユダヤ系アメリカ人に確かめました。





 本品は 1970年頃のフランスで製作され、未販売のまま残っていたデッドストック品です。およそ五十年前の品物ですが、未使用の新品ゆえに保存状態は極めて良好です。特筆すべき問題は何もありません。

 ヘブル語ハイをモティーフとした本品は、中世以来およそ千年、「申命記」から考えると二千四、五百年以上の文化的伝統を秘めたペンダントです。ハイの派生語カヤ(חיה‎)は動物のことで、本品は犬や猫の形にも見えます。生命のペンダントである本品は、どなたにもお使いいただける愛らしい品物に仕上がっています。





ペンダントの本体価格 8,800円 ※ 鎖は別売り

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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