パリの版元ヴィルミュルによる小さなカニヴェ。ヴィルミュルのカニヴェは珍しく、私もいまのところ本品一点しか持っていません。本品は標準的なものに比べて小さなサイズであるゆえに、レース状部分の比率が大きく、繊細な印象を与えます。
表(おもて)面にはグラヴュール(エングレーヴィング)とオー・フォルト(エッチング)によって幼子イエスの聖画を描き、金色の縁取りで囲んでいます。イエスはエウカリスチアの聖体パンの原料である小麦を右手に、ワインの原料である葡萄を左手に高く掲げて持ち、荒涼としたゴルゴタの丘に立っています。神はこの犠牲を嘉(よみ)し給い、イエスと小麦、ブドウには天からの祝福の光が降り注いでいます。
この聖画は、エウカリスチアがイエス受難の再現であることを表しています。エウカリスチアは聖体拝領のこと、あるいは聖体拝領における聖体と聖血のことです。エウカリスチアはイエスの受難によって有効性を持つ秘跡です。聖画の下に書かれた「十字架の果実」(Les
fruits de la croix)という言葉は、そのことを表しています。
裏面には次の言葉がフランス語で書かれ、イエスに対する愛と信心を呼び掛けています。
Amour à Jésus notre Sauveur. | われらの救い主イエスへの愛 | |||
Il a repandu son sang et dechiré sa chair pour être l'aliment de nos âmes; | イエスはわれらの魂の食物となるために血を流し、肉を裂き給うた。 | |||
il a reçu la mort pour nous donner la vie | われらに生命を与えるために、死を受け給うた。 | |||
et résidant encore sur l'autel, il renouvelle chaque jour le même sacrifice. | イエスはいまも祭壇に住まいて、日々新たに同じ犠牲を払い給う。 | |||
Chrétiens, aimons-le de toute la puissance de notre coeur. | キリスト者よ。われらの心に能(あた)うかぎりの強さでイエスを愛そうではないか。 |
その下には版元の名前と所在地が記されています。
Villemur, éditeur, rue Serpente, 36, Paris パリ、セルパント通三十六番地 ヴィルミュル社
パリの版元ヴィルミュルは少なくとも 1939年まで存続し、カニヴェの他、ピープ・ショウ用の聖母の紙人形等も製作していました。
本品はレース状切り紙の一部に欠損がありますが、百年以上前の紙製品としては十分に良好な保存状態です。写真に写っている額は木製で、ところどころの塗装が自然に剥げています。下記の価格にはこの額が含まれます。