十一、二歳の少年として表されたイエズスを慕って、羊たちが集まっています。手前の二頭は子羊で、イエズスに全身をこすりつけて甘えています。イエズスは両腕を斜め下に広げて、羊たちを迎え祝福していますが、両方の掌には痛々しい釘の傷が露わになっています。群像を取り囲むように、ラテン語式綴りのフランス語で次の言葉が書かれています。
Je suis le bon pasteur. Je donne ma vie pour mes brebis. 我は善き牧者なり、善き牧者は其の羊の為に生命を棄つ。(ラゲ訳)
これは「ヨハネによる福音書」10章11節の引用です。「善き牧者」はキリストを表す図像として古代以来使われ、カタコンベの壁画にも作例が見られます。
本品において、善き牧者イエズスと羊たちの群像は上部がアーチとなった画面に描かれ、ゴシック聖堂のステンドグラスのように見えます。輪郭に黒ではなく藍色を使うことで印象が柔らかくなるとともに、藍色が背景の黄色と美しく調和して、画面に華やぎを与えています。
表(おもて)面の最下部に、「ファルムティエ修道院」(Abbaye de Farmoutiers)、図版番号 (No. 31)、「ベルギーで印刷」(imprimé
en Belgique) の文字があります。ファルムティエ(Farmoutiers イール=ド=フランス地域圏セーヌ=エ=マルヌ県)はパリの東50キロメートル程にある小さな町です。ここにあるファルムティエ修道院は7世紀に創建され、長い歴史を誇ります。フランス革命時に廃院となり、建物も破壊されて石材となりましたが、1930年に数人のベネディクト会士が移り住み、修道院が復活しました。
聖画の裏面には「コミュニオン・プリヴェ」(Communion Privée)、「聖フランソワ・ド・サール学院礼拝堂」(Chapelle de
École Saint-François de Sales)、「1941年3月25日」(25 Mars 1941)、「ラウル・ボダン」(Raoul
Baudin) の文字と、ディジョンの印刷工房名「A. ブノワ」(Librairie A. Benoist, Dijon) が書かれています。
フランスでは十一、二歳の子どもが「コミュニオン・ソラネル」(Communion Solenelle) という特別な聖体拝領に参加します。「コミュニオン・ソラネル」は集団で行われることが多いですが、なかにはプライヴェートな方式を好む人もあります。「コミュニオン・プリヴェ」はひとつの家族のみが参加して実施される方式の「コミュニオン・ソラネル」です。1941年3月25日に、ディジョンの聖フランソワ・ド・サール学院の礼拝堂で、この学校に在籍するラウル・ボダン少年の「コミュニオン・ソラネル」が行われたことがわかります。
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ベルベットの色は価格を変えずに変更できます。また価格が変わる可能性をお許しいただければ、どのような額でもご用意できます。
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