G. ジュリアン作 「神に創られたるものよ、主を誉めよ」 聖フランチェスコと被造物の賛歌 石版画による聖画 102 x 70 mm
写真に写っている額のサイズ 18 x 13 cm 額の厚さ 2.5 cm
聖画のサイズ 102 x 70 mm
フランス 二十世紀中頃
二十世紀半ばのフランスで作られた小聖画。被造物を通して主を賛美するアッシジの聖フランチェスコの木版画を、石版の技法により紙に転写しています。
アッシジの聖フランチェスコ(San Francesco d'Assisi, 1182 - 1226)は亡くなる直前の1225年夏に、「被造物の賛歌」(Il Cantico delle Creature)、別名「太陽の賛歌」(Cantico di Frate Sole )という美しい詩を作りました。
亡くなる前の聖フランチェスコは聖痕の痛みに加え、重い眼病に苦しんでいました。寒い冬になっても、聖人が病床に伏すサン・ダミアノの房は片方の壁が筵(むしろ)を吊っただけでした。また房には絶えずネズミが侵入したために、病む聖人は落ち着いて祈ることも眠ることもできず、たいへん苦しみました。或る夜、聖人がこれらの苦しみについて考えていると、「もうすぐ天の御国で大きな宝を得ることができるのだから、喜びなさい」という声が聞こえました。こうして作られたのが「被造物の賛歌」です。内容は次の通りです。
I | いと高く、全能にして善なる主よ。 賛美と栄光、誉れとすべての祝福は御身のものです。 いと高き御方よ。それらは御身にのみふさわしく、 人は誰一人、神の御名を口にすることもできません。 |
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II | わが主よ。すべての被造物とともに、御身は讃えられよ。 とりわけ偉大なる兄弟、太陽とともに。 昼間[があるの]は太陽ゆえであり、われらは太陽に照らされる。 太陽は美しく、大きなる輝きを発して、いと高き御方よ、御身を思い起こさせます。 |
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III | わが主よ。姉妹なる月と、星たちによって、御身は讃えられよ。 [御身が]天のうちに創り給うた月と星々は、清澄にして貴く美しい。 |
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IV | わが主よ。兄弟なる風と、大気と、雲と、晴天と、あらゆる天気によって、御身は讃えられよ。 [御身は]彼らを通して、すべての被造物を支え給う。 |
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V | わが主よ。姉妹なる水によって、御身は讃えられよ。 水はとても有用にして謙譲、貴重にして清純です。 |
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VI | わが主よ。兄弟なる火によって、御身は讃えられよ。 火は夜を照らし、 美しく、たくましく、力強い。 |
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VII | わが主よ。われらの母なる姉妹、大地によって、御身は讃えられよ。 大地はわれらを支え、治め、 色づいた花々や草とともに、さまざまな果実を生み出します。 |
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VIII | わが主よ。御身への愛ゆえに[人を]赦す者たち、また病と苦しみを抱える者たちによって、御身は讃えられよ。 平和のうちに耐え忍ぶ者たちは幸いです。 彼らは、いと高き方よ、御身から冠を受けるのですから。 |
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IX | わが主よ。姉妹なる死によって、御身は讃えられよ。 生きる者は誰も、肉体の死を逃れることができません。 永遠の死に至る罪のうちに死ぬ者たちは不幸ですが、 御身のいとも聖なる御意志のうちにある者たちは幸福です。 なぜならば彼らには第二の死が無いからです。 |
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X | わが主をほめ讃え、感謝せよ。大いなる遜(へりくだ)りを以て主に仕えよ。 |
本品に描かれたフランチェスコは大きく開いた両腕を挙げて大地に跪き、太陽をはじめとする全ての被造物に「主を讃えよ」と呼びかけています。
Œuvres de Bon Dieu, bénissez le Seigneur. 神に創られたる者たちよ、主を讃えよ。
キリスト教思想はアニミズム(無生物を含むすべての物に魂があるとする考え方)ではありませんから、「被造物の賛歌」に登場する天体や気象、水や火などに「神を讃えよ」と呼びかけるのは修辞的表現であって、アニミズム的思想の表れではありません。しかしながら神が天地創造の後に見て「良し」とされた世界(「創世記」
1: 12, 18, 21, 25, 31)は、秩序ある美しさによって神を賛美しています。
ギリシア語で「宇宙」を「コスモス」(κόσμος)といいますが、これは「カオス」(χάος)の反意語で、「秩序」が原意です。宇宙(マクロコスモス、大宇宙)と身体(ミクロコスモス、小宇宙)はいずれも神の被造物であるゆえに、これらふたつの間に照応関係が成り立つという考え方は、中世以前に留まらずルネサンス以降まで自明の理と考えられてきました。
「被造物の賛歌」において、聖フランチェスコはマクロコスモスに対し、「主を賛美せよ」と語り掛けています。しかるにマクロコスモス(大宇宙)とミクロコスモス(フランチェスコ自身)には照応関係がありますから、「被造物の賛歌」はマクロコスモスへの語り掛けであると同時に、ミクロコスモスすなわち聖フランチェスコ自身の全身全霊による神への賛美であることがわかります。肉体の健康を損ないつつも未だ地上に在る聖フランチェスコは、「わたしは裸で母の胎を出た。裸でそこに帰ろう。主は与え、主は奪う。主の御名はほめたたえられよ」(「ヨブ記」
1:21)と言ったヨブのように、神から賜った地上の身体と生命に感謝しているのです。
なお撮影時の反射を防ぐために、商品写真では聖画を保護する透明板(ガラスまたはアクリル)を一時的に外しています。上の写真に写っているように、聖画の右上隅に小さな折れ跡があって、この部分が上に持ち上がっています。額に透明板を取り付ければ折れ跡の癖は自然に修正されて、聖画はまったく平坦になります。
本品はいまから数十年前のフランスで制作されたアンティーク品です。古い品物ですが、良質の中性紙に刷られているため、極めて良好な保存状態です。ヨーロッパの美術思想において、本品のように単色の作品は「時の経過で移ろわないもの」を表すのにふさわしいと考えられてきました。単色の作品には変色や褪色を起こさないという実用的利点もあります。
聖画はときに「ボン・デュズリ」(仏 bon-dieuserie 神様趣味)と揶揄されるキッチュ(俗悪)な図柄になったり、メッセーが通俗的な教訓話になったりしがちですが、本品は図柄の点でも内容の点でも「小さな芸術品」と呼べる水準に達しています。「高い精神性」という聖画ならではの特性が、無駄なく活かされた作例です。
※ 商品写真に写っている額はその後に販売済みとなり、現時点では在庫しておりませんので、同等クラスの他の額をご用意いたします。額の意匠や色等についてご要望があれば、何なりとお申し付けくださいませ。別珍の色も変更できます。
本体価格 11,800円
電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。
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