稀少品 エチエンヌ・ゴーチエ作 「サント・セシル」(聖セシリア) コロタイプによるセピア色の小聖画 138 x 90 mm


額のサイズ 20 x 15 cm

余白を含めた聖画全体のサイズ 138 x 90 mm


 フランス  1903年から 1921年



 コロタイプによる小聖画。烏賊墨(セーピア)色のインクを用いて、アルブミン・プリントのように温かみのある色調に仕上げています。





 原画はマルセイユに生まれパリに没した画家エチエンヌ・ゴーチエ (Étienne Gauthier, 1842 - 1903) が 1878年頃に描いた油彩画「聖セシリアの死」(Sainte Cécile morte) で、縦 109センチメートル、横 192センチメートルという大作です。

 「聖セシリアの死」は、自宅の浴室で処刑されて横たわる聖セシリアの遺体を描いています。白い衣を着たセシリアは、殉教者の栄光を象徴するナツメヤシの葉を抱き、首から血を流して浴室の大理石に横たわっています。斬首の際、剣を三回振りおろしても、セシリアの首は胴から離れませんでした。手前にある剣は、怖気づいて逃げ出した処刑人が打ち捨てたもので、殉教者の血を象徴する赤い薔薇が添えられています。

  セシリアの足許には、ネック付のリュラのような古楽器が置かれています。ラテン語聖セシリア殉教伝の次の一節に基づき、セシリアは14世紀以降に音楽の守護聖人として描かれるようになりました。

  CANTANTIBUS ORGANIS ILLA IN CORDE SUO SOLI DOMINO DECANTABAT. オルガンが鳴り響く中、彼女はその心のうちで神にのみ向かって歌った。

 なお本品の聖画を原画と比べると左右が反転しており、やはり絶命後のセシリアをテーマにしたステファノ・マデルノのバロック彫刻を思い起こさせます。ステファノ・マデルノの彫刻は、ローマのサンタ・チェチリア・イン・トラヴェステレ聖堂にあります。


(下) Stefano Maderno (1575 - 1636) , St. Cecilia, 1600, length 130cm, marble, Santa Cecilia in Travestere, Roma




 本品は 20世紀の初め頃のパリで刷られました。裏面最上部に「万国郵便連合」(union postale universelle) の文字が入った絵葉書の体裁で制作されています。1930年代までの絵葉書はほぼすべてがコロタイプで刷られていて、本品も例外ではありません。





 下の写真は聖画の一部を拡大したもので、定規のひと目盛は 1ミリメートルです。不規則に並んだ微小な点はゼラチンのレティキュレーションによるもので、コロタイプによる版画の特徴です。





 コロタイプはアンティーク・フォトグラヴュアと並んで最も細密性に優れた技法であり、その細かさは現代の「グラビア」(オフセット印刷)の比ではありません。下に示したサンプルは現代の美術印刷で、上の写真と同等の面積を撮影しています。





 聖画の下部中央には「サント・セシル」(Sainte-Cécile フランス語で「聖セシリア」の意)、上部には「リュクサンブール美術館」(Le Luxembourg) と書かれています。

 エチエンヌ・ゴーチエの「聖セシリアの死」は 1878年のサロン展に出品され、絶賛を受けました。当時、リュクサンブール美術館は存命画家の作品蒐集に力を入れており、この作品を欲しがったのですが、エチエンヌ・ゴーチエは謙虚さからこれを断り、自身の姉妹の夫であったランビュトー伯爵 (Philibert Marie Édouard Simon Lombard de Buffières, comte de Rambuteau, 1838 - 1912) が所蔵することとなりました。1903年にエチエンヌ・ゴーチエが亡くなると、「聖セシリアの死」はランビュトー伯爵によってルーヴル美術館に寄贈され、同年、リュクサンブール美術館はようやくこの作品を手に入れました。

 「聖セシリアの死」は 1903年から 1921年までリュクサンブール美術館に収蔵され、1921年から 1933年までフランス政府 (le Commissariat des Expositions) に移管された後、1933年からはリヨン首座大司教座聖堂サン=ジャン (la primatiale Saint-Jean-Baptiste de Lyon) の収蔵となり、現在に至っています。1986年からはオルセー美術館に貸し出されています。





 聖画の左下に「ゴーチエ・ピーンクシット」(Gauthier pinx) と書かれています。"Gauthier pinx" は "Gauthier pinxit" の略記です。"pinxit"(ピーンクシット)は、「描く」という意味のラテン語の動詞 "pingo"(ピンゴー)の変化形のひとつ(直説法能動相完了三人称単数形)で、「描いた」という意味です。すなわち "Gauthier pinx" は「ゴーチエが描いた」という意味です。

 なお聖画の周囲の文字も聖画と同じくコロタイプによるもので、聖画と同じ版により同時に刷られています。





 本品はおよそ百年前に制作された真正のアンティーク・コロタイプですが、良質の中性紙に刷られているため、あたかも昨日刷られたかのように良好な保存状態です。刷られた枚数は不明ですが、耐久性のある金属版インタリオと違って、ゼラチンを使うコロタイプ版で刷れる数は、およそ三百枚が限度です。したがって本品は、一見したところ普通の絵葉書のように見えますが、グラヴュールによるカニヴェをはじめ、さまざまな技法による小聖画のなかでも、最も入手が困難な稀少品です。

 木製フレームにベルベットを使用し、額装しました。額のサイズは 20センチメートル×15センチメートルの自立式です。ご希望により、壁掛け用金具を無料で取り付けます。サンプル写真では赤のベルベットを使っていますが、ベルベットの色は無料で変更できます。ご注文時において写真の額が手に入らない場合は、同等クラスの額をご用意いたします。





本体価格 18,800円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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