Ch. マセ作 《聖母子の十字架》 エマイユ・シャンルヴェ風のテラ・コッタ 大きめサイズの一点もの 54.0 x 40.7 mm


十字架本体のサイズ 縦 54.0 x 横 40.7 mm  厚さ 6.2 mm

重量 9.5 g


フランス 二十世紀中頃



 二十世紀半ばのフランスで制作されたクロワ・ド・クゥ。「クロワ・ド・クゥ」(croix de cou) とはフランス語で「首の十字架」という意味で、首に懸ける十字架形ペンダントを指します。「クロワ・ド・クゥ」はキリスト教文化を背景としながらも、どなたにでもお使いいただけるビジュ(仏 bijou ジュエリー)です。





 本品は幅広のラテン十字で、上端は半円形となっており、他の末端も角を取って優しい丸みを帯びています。表(おもて)面には円形の窪みがあり、ここに不透明ガラスのフリットを入れて焼成しています。本品は金属製品ではありませんが、胎(下地)の窪みに入れたフリットを高温で融解・固着させる技法は、エマイユ・シャンルヴェ(仏 le champlevé)とまったく同じです。

 フリットを入れた窪みは十三か所で、うち七つの円は直径が大きく、十字架の縦木の中心と横木の中心に沿って並んでいます。七つの大きな窪みはクリーム色のフリットで満たされ、うち五つの窪みにはクリーム色の上から瑠璃色のフリットが被せられています。このほか縦木の上端と横木の両端に二箇所ずつ、計六か所に小さな窪みがあり、クリーム色のフリットの上に、黒あるいは濃いグレーのフリットを被せています。小さな窪みの暗色は残りの三色(クリーム色、瑠璃色、金色)ほど目立ちませんが、これら三色を引き立てる役割を果たしています。





 クリーム色を白、瑠璃色を青と考えると、縦木と横木の中心線に沿う七つの窪みはキリストの象徴と考えられます。

 まず白についてですが、「ヨハネによる福音書」一章九節は、イエス・キリストについて、「その光は、まことの光で、世に来てすべての人を照らすのである。」(新共同訳)と述べています。しかるに白色光はあらゆる波長の可視光線を含みます。したがって白は「光であるキリスト」を表すのに最もふさわしい色といえます。

 さらに白は罪の無さを象徴する色です。しかるにキリストは罪無くして十字架に付けられたアーグヌス・デイー(神の子羊)です。したがって白は「神の子羊であるキリスト」を表すのに最もふさわしい色といえます。

 次に青について。「シラ書」二十四章は「知恵」が自分自身をほめたたえる賛歌となっています。この十九節には「わたしを慕う人たちよ。わたしのもとに来て、わたしの実を心行くまで食べよ。」(新共同訳)と書かれています。古代・中世の神学者たちは、この知恵をキリストの象徴と解釈しました。しかるに知恵を象徴する色は、青です。したがって青は「知恵であるキリスト」を表すのに最もふさわしい色といえます。





 白と瑠璃色に彩られた七つの窪みを、聖母マリアの象徴と考えることも可能です。十字架に架かったのはイエス・キリストであって、聖母ではありませんが、フランスのクルシフィクスには裏面に聖母マリアを浮き彫りにして、十字架の苦しみをイエスと分かち合う聖母を表した作例が時おり見られます。したがって本品の七つの窪みが、キリストと聖母を重層的に象徴していると考えることも十分に可能です。

 七つの窪みが聖母であるならば、白は無原罪性を表します。1854年12月8日にピウス九世が無原罪の御宿りが教義と宣言して以降、聖母の衣が白で描かれることが多くなりました。

 一方、青は聖母のマントの色です。ルネサンス以降の西ヨーロッパ宗教画において、聖母は青いマントを羽織るようになりました。最も水準の高い宗教画において、聖母のマントはウルトラマリン、すなわちバダフシャンに産する瑠璃(ラピス・ラズリ)から作った顔料を用いて描かれています。本品の瑠璃色はラファエロが描く聖母の衣を思い起こさせます。





 本品は美しく鍍金されており、表から見ても材質が分かりませんが、裏面を見ればテラ・コッタ製であることが分かります。フランスではデーヴル(Desvres、オー=ド=フランス地域圏パ=ド=カレー県)、カンペール(Quimper ブルターニュ地域圏フィニステール県)、ヌヴェール(Nevers ブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏ニエーヴル県)等で盛んに窯業が営まれています。本品はこれらの地域のいずれかで、職人の手作りにより制作されたものです。十字架交差部に窯のモノグラムと思われる図形が描かれ、その下に職人のサイン(Ch. Massé Ch. マセ)が書かれています。





 上の写真は本品を男性店主の手に載せて撮影しています。女性が実物をご覧になると、上の写真で見るよりも一回り大きなサイズに感じられます。





 本品は手間をかけて制作された一点ものの十字架です。数十年前のフランスで制作された真正のアンティーク品(ヴィンテージ品)ですが、古い物であるにもかかわらず、保存状態はきわめて良好です。特筆すべき問題は何もありません。サイズは大きめですが、金属のように重くないので、日々快適にご愛用いただけます。





本体価格 14,800円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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