リジューの聖テレーズ(テレジア)の聖遺物。聖テレジアの遺体を収めた棺の上に置いた薔薇の花弁を、リジューのカルメル会の修道女たちが一枚一枚丁寧に押し花にしたものです。
この紙包みはもともと跣足カルメル会の紋章で封緘(ふうかん)されていたのですが、長い年月が経つうちに糊が弱くなって、包みを開けることが可能になっています。そっと開けてみると、たいへん不思議なことに、古い年代のものにもかかわらず、花弁は本来の薔薇色を保っています。その様子はあたかもガラスの棺の中で眠っているようにしか見えない聖テレジア自身に似ています。
小さな紙包みの一方の面に、次の言葉がフランス語で記されています。
pétales de roses déposé sur la Châsse de Ste. Thérèse de l'Enfant-Jésus 幼きイエズスの聖テレジアの聖遺物入れ(棺)の上に置かれた薔薇
キリスト教では、古代以来、殉教者や有徳の聖者の遺体を聖遺物として崇敬してきました。また生前、死後を問わず、聖人の身に触れ、あるいは身近にあった物もまた、聖人の徳がいわば乗り移った物と考えられ、「聖遺物」と看做されました。
紙包みを封緘していた紙片には、カルメル会の紋章を囲む楕円の帯に、フランス語で「カルメル会修道院」(Monastère des Carmélites)、「カルヴァドス、リジュー」(Lisieux,
Carvados) と書かれています。