ステンレス削り出しの重厚なケース 《ユール・ヤーゲンセン オートマティック》 大型のハイ・ジュエル・ウォッチ 1970年代

Jules Jurgensen, automatic, A Schild cal. 1916, 17 jewels, 1970s


ケースのサイズ 縦 39.7 x 横 39.0 mm  風防と裏蓋を含む最大の厚さ 13.2 mm

適合するバンド幅 22 mm



  高級時計メーカーとして知られたユール・ヤーゲンセンの自動巻(じどうまき)時計。文字盤の個性的なデザインと大型のケースは、いかにも 1970年代の時計らしい特徴です。オートマティック・ムーヴメント、「アー・シールド キャリバー 1916」を搭載したハイ・ジュエル・ウォッチです。

 本品は如何にも 1970年代らしいデザインですが、機械式時計であるという点を除けば、外見上は現代の時計と共通点が多くなっています。すなわちセンター・セカンド式あるいは「中三針(なかさんしん)式」であり、秒針は赤色ではなく、ケースの材質はステンレス・スティールです。時針と分針の形も現代風の太いバトン型です。サイズに関してもヴィンテージ・ウォッチとしては最大級で、ケースの縦 39.7ミリメートル、横 39.0ミリメートル、風防と裏蓋を含む最大の厚さは 13.2ミリメートルです。バンドの幅(時計に取り付ける部分の幅)は 22ミリメートルです。





 時計内部の機械をムーヴメント(英 movement)、ムーヴメントを保護する金属製の容器(時計本体の外側)を「ケース」(英 case)といいます。本品のケースはステンレス・スティールを分厚く削り出して作られており、重量感があります。ステンレス・スティールは摩耗に強く、アレルギーも起こしにくい優れたケース素材です。鏡面仕上げのステンレス・スティールは使ううちに無数の細かいキズが付いて目立ちますが、本品のケースはヘアライン加工を施されているため、小キズが気になりません。ヘアライン加工は光を柔らかく反射して、高級感を兼ね備えます。




 重量感、高級感とならんで、本品のケースが有するもう一つの特徴は、ドレッシーさです。

 時計には必ず竜頭(りゅうず)があって、三時の位置から外側に突出しています。三時の位置に突出する竜頭は、ケース・デザインの流れるような線を中断してしまう目障りな部分です。それゆえ女性用のカクテル・ウォッチには、バック・ワインド式といって、時計の裏側に歯車状の平たい部品を取り付け、竜頭の代わりにする場合があります。しかしながらバック・ワインド式を採用すると、汗をはじめとする水分が時計内部に浸入しやすくなります。女性用カクテル・ウォッチはパーティーの間だけ身に着けるのでバック・ワインド式でも構いませんが、日常使用する時計にバック・ワインド式を採用することはできません。

 竜頭を目立たなくするには、竜頭のサイズをできるだけ小さくする方法もあります。クォーツ式時計(電池で動く現代の時計)はヴィンテージ・ウォッチ(アンティーク時計)に比べると竜頭が非常に小さいですが、これはクォーツ式時計の場合竜頭を操作する機会が少ないので、使い易さよりも見栄えを優先しているからです。しかしながらヴィンテージ・ウォッチの場合はぜんまいを巻く必要があるので、大きめサイズの使い易い竜頭が取り付けられています。本品は自動巻ですが、自動巻ムーヴメントは回転錘による巻き上げ量が足りない場合に手動でぜんまいを巻き上げるように作られていますし、時刻合わせの必要もあります。したがって自動巻の時計にも、手巻きと同じサイズの竜頭が取り付けられます。

 それゆえ男性用、女性用を問わず、また手巻、自動巻を問わず、日常使用を想定したヴィンテージ時計には、大きめの竜頭が三時の位置から突出しています。本品も例外ではありません。しかしながら本品ではケースの前面がムーヴメントの上下左右に張り出し、竜頭は三時側の張り出しによってほとんど隠されています。正面から見ると、竜頭の突出は約一ミリメートルしかありません。本品のケースは特徴的な形状によって重厚さを演出するとともに、竜頭を隠すことでドレッシーさをも兼ね備え、非常に優れたデザインであることがわかります。竜頭の突出が目立たなくなるように工夫されたケースの形状は、本品を裏側から見ればよくわかります。





 上の写真はケースの裏側で、裏蓋に「ユール・ヤーゲンセン」(JULES JÜRGENSEN)、「ステンレス・スティール」(STAINLESS STEEL)、「スイス製」(SWISS MADE)、「オートマティック」(AUTOMATIC 自動巻)、"148308H"(ケースのシリアル番号)の刻印があります。 裏蓋中央に刻印されているのはデンマーク王室の紋章です。

 風防(クリスタル)はこの時計にもともと付いていたオリジナルで、プレクシグラス、すなわち高い透明度のアクリル樹脂でできています。新品ではないので、ところどころにキズがあります。キズはいずれも小さいので写真にうまく写っていませんが、美観のうえでも実用するうえでも問題にならない程度の小さなものです。





 本品の文字盤はケースと同色のライト・シルバーで、放射状のヘアライン加工が施され、光を柔らかく反射します。文字盤はたいへん綺麗な状態ですが、再生(リファービッシュ、リダン)したものではなく、時計が製作された当時のオリジナルです。金色に輝くデンマークの王冠を最上部に取り付け、優雅な斜体で「1740年創業 ユールヤーゲンセン」(Jules Jürgensen, Established in 1740)、「オートマティック」(AUTOMATIC)、「スイス製」(SWISS MADE)の表示があります。

 三時の位置に「デイ・デイト表示」があります。「デイ」(英 day)とは「曜日」、「デイト」(英 date)とは「日付」のことです。本品のデイト表示は竜頭を繰り返し押すことで早送りでき、たいへん便利です。





 文字盤の周囲十二か所にある「長針五分ごと、短針一時間ごと」の印を「インデックス」(英 index)といいます。本品のインデックスは銀色の直方体を植字したバー・インデックスで、黒い線が入っています。文字盤から大きく突出した直方体インデックスは個性的であるとともに、優れた視認性を確保しています。

 時針と分針の先端寄りにはトリチウム(三重水素)による夜光塗料が塗られていますが、現在では劣化していて光りません。トリチウムは核実験場や原子力発電所から放出される放射性物質ですが、時計に使われる程度の分量で被曝することはありません。文字盤最下部で「スイス製」(SWISS MADE) の前後に書かれた "T" の文字は、トリチウムが使用されていることを表しています。





 電池で動く時計を「クォーツ式」、ぜんまいで動く時計を「機械式」といいます。また時計内部の機械を「ムーヴメント」(英 movement)といいます。機械式ムーヴメントには「手巻ムーヴメント」と「自動巻ムーヴメント」(オートマティック・ムーヴメント)があります。本品が搭載するのは、機械式ムーヴメントのなかでも、「自動巻ムーヴメント」と呼ばれる種類です。手巻ムーヴメントと自動巻ムーヴメントの違いは、手巻ムーヴメントが竜頭(りゅうず ツマミ)を回してぜんまいを巻くのに対し、自動巻ムーヴメントは二通りの方法でぜんまいを巻けることです。すなわち自動巻ムーヴメントは、手巻ムーヴメントと同様に竜頭を回してぜんまいを巻くこともできますし、手首に着けて日常生活をしていれば、ぜんまいが自動的に巻き上がるようにも作られています。

 自動巻ムーヴメントがぜんまいを自動的に巻げるためのエネルギーは、「回転錘」(かいてんすい ローター)の動きから取り出しています。上の写真で下半分を占める半月形の部品が回転錘で、「ユール・ヤーゲンセン社」(Jules Jürgensen Corporation)、「アナジャスティッド」(UNADJUSTED)、「スイス製」(SWISS)、「十七石」(SEVENTEEN JEWELS)、及びシリアル番号の刻印があります。

 「アナジャスティッド」とは英語で「未調整」という意味で、文字通りには「天符の歩度調整が為されていない」という意味に受け取れます。しかしながらこれはもちろん嘘であって、実際のところは、当然のことながら、歩度(時刻の進み具合)の調整が行われています。歩度が調整されていなければ、時計は使い物になりません。それにもかかわらず「アナジャスティッド」(未調整)と表示されているのは、時計会社の節税対策です。本品はアメリカ合衆国で販売された時計ですが、スイスのア・シールド社が製作したムーヴメント「キャリバー 1916」を搭載しています。スイスからムーヴメントを輸入する際に、歩度が調整されていない未完成の部品として輸入すれば、高率の関税を逃れることができました。したがってユール・ヤーゲンセンのものに限らず、アメリカ合衆国に輸入されたスイス製ムーヴメントには、ほとんど常に「アナジャスティッド」と表示されています。

 良質の機械式時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはモース硬度「九」と非常に硬い鉱物(コランダム Al2O3)ですので、高級時計の部品として使用されるのです。手巻、自動巻にかかわらず、必要な部分すべてにルビーを入れると、「十七石」(じゅうななせき)のムーヴメントになります。十七石のムーヴメントは「ハイ・ジュエル・ムーヴメント」(英 high jewel movement)と呼ばれ、高精度、長寿命の高級機です。「ア・シールド キャリバー 1916」は毎時二万一千六百振動 (f = 21600 A/h)、パワー・リザーヴ四十四時間を誇るハイ・ジュエル自動巻ムーヴメントで、耐震装置はキフ・ウルトラフレックス (Kif Ultraflex) を採用しています。





 本品のバンド幅は二十二ミリメートルです。本品はケースも文字盤も無彩色ですので、何色のバンドでも美しく合わせることができます。時計会社はバンドまで作っていませんので、アンティーク時計のバンドをお好みのものに取り換えても、アンティーク品としての価値はまったく減りません。商品写真に写っているバンドは、動作確認のために時計を着用した際に数日間使用しましたが、十分に綺麗な状態です。時計お買上時のバンド交換は、当店の在庫品であれば無料または割引価格にて承ります。在庫品を見るには、このリンクをクリックしてください。





 当店の時計は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払いでもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。遠慮なくご相談くださいませ。





本体価格 148,000円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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