可愛いサイズの金無垢アンティーク 《ブローバ》 とても小さな手巻時計 ホワイト・ゴールドの高級品 直径 15ミリメートル 1959年


 アメリカのブローバ社が制作した女性用手巻き時計。電池が要らない機械式時計で、一日に一回、手動でぜんまいを巻いて使います。銀色の部分は十四カラット・ホワイト・ゴールド(十四金)でできており、「金無垢(きんむく)時計」と呼ばれる高級品です。

 時計の本体は一円玉よりも小さく、現代の時計には見られない可愛いサイズです。文字盤の直径は十ミリメートルしかありません。時計の基本であるシンプルな円形は、清潔で飽きの来ないデザインです。バンドを取り付ける突起は、植物の若芽を思わせる綺麗な形です。





 時計内部の機械を「ムーヴメント」(英 movement)といいます。時計本体の外側はムーヴメントを保護する部分で、これを「ケース」(英 case)といいます。ケースは「ベゼル」(英 bezel)と裏蓋に分かれます。ベゼルはムーヴメントを保護するとともに、風防(いわゆる「ガラス」)を嵌める枠としても機能します。





 時計ケースのサイズには流行があります。

 大まかに言うと、いまから百年前のウォッチは大きなサイズでした。当時は時計ムーヴメントを小さく作る技術がまだ十分に発達していなかったので、女性用腕時計は昨今と同じぐらいの大きめサイズでした。いっぽう男性用腕時計は未だ存在せず、男性は懐中時計を使っていましたが、大きなサイズの懐中時計が流行していました。

 二十世紀も半ばになる頃には、男女とも現在に比べてかなり小さなサイズの腕時計が流行するようになります。機械は大きく作るよりも小さく作る方が難しいので、当時の時計各社は薄く小さな時計を作って技術力を誇示しました。

 1960年代後半頃になると小さな腕時計は徐々に飽きられ、サイズが再び大きくなってゆきます。こうして二十世紀末頃に、腕時計のサイズは再び大きくなりました。大きな腕時計の流行はしばらく続きましたが、最近になって時計は再び小さくなり始めています。腕時計の小型化・薄型化は今後も進行し、数十年後には二十世紀半ばのように小さなサイズになると予想されます。





 本品が作られた 1959年は、腕時計が極小化した時代です。本品は直径十五ミリメートルで、一円硬貨よりも小さなサイズです。他方、ムーヴメント(時計内部の機械)には或る程度の厚みがあります。したがって現代の時計に比べると、女性用アンティーク時計は飴玉のように可愛らしいデザインに仕上がります。実際の厚みは現代の時計と変わらず、本品の厚みも現代の時計に比べてむしろ薄いですが、ケースの直径が小さいために、高さ(厚み)が強調されて感じられます。





 本品のケースはめっきではない金そのもの、正確に言うと「十四金」という金合金でできています。このような時計を「金無垢時計」といいます。

 時計のケースは手首に直接触れるので、ベース・メタル(貴金属ではない金属)を使うと、敏感な方に金属アレルギーの症状が出ることがあります。金(ゴールド)は金属アレルギーを起こしにくいので、時計ケースの素材として優れています。

 しかしながら金には欠点もあります。純金を木槌で叩くと、薄く伸びて箔になることからも分かるように、金はたいへん軟らかい金属です。純金は軟らかすぎて容易に変形し、実用品に使うことができません。それゆえジュエリーや時計ケースを金で作る場合には、実用的な強度を持たせるために、ニッケル、銅、銀などを混ぜて意図的に純度を落とし、合金とします。本品のようなホワイト・ゴールドは、金とニッケルの合金です。わが国でよく目にする「十八金」は純度二十四分の十八の金合金、アメリカ合衆国で使われる「十四金」は純度二十四分の十四の金合金です。

 「十四金」は「十八金」に比べて丈夫である点が優れています。時計は日々着用する品物ですから、ケースの素材には耐久性が必要です。十八金は摩耗や変形を起こしやすいですが、十四金であれば大丈夫です。





 バンドを取り付けるための突起をラグ(英 lugs)といいます。現代の時計は十二時側と六時側にそれぞれ二本ずつのラグがあります。現代の時計バンドは革や布でできた薄く幅広の形状で、バネ仕掛けで伸縮する小さなピン(バネ棒)により、それぞれの側のラグに固定されています。

 しかしながら二十世紀中頃の女性用時計はとても小さいので、ほとんどの場合、十二時側と六時側にそれぞれ一本ずつのラグが突出し、バンドをラグの孔に通す「センター・ラグ」方式が採用されていました。本品もそのような時計のひとつです。


 時計会社はバンドを作っていません。アンティーク時計とバンドの組み合わせに必然性は無く、以前の所有者が自分のサイズや好みに合ったものを付けているというだけのことです。したがってアンティーク時計のバンドに関して、「オリジナル」にこだわる必要はまったくありません。バンドは消耗品ですので、傷んでいれば取り替える必要がありますし、当時のバンドが使える状態で残っている場合でも、自分のサイズや好みに合わなければ取り替えて構いません。

 当店に入荷したとき、本品には銀色の金属製バンドが付いていました。しかしながらケースと同色のバンドが付いていると、ラグが可愛い形をしていても、せっかくのデザインが目立たなくなってしまいます。本品のラグは若芽のように美しく造形されているので、黒いコード・バンド(紐のバンド)に付け替えました。コード・バンドは使い慣れないうちは着脱の操作が少し面倒ですが、金属製バンドよりも高級感があり、小さな時計を引き立ててくれます。コード・バンドは慣れればスムーズに着脱できるようになります。コード・バンドを使いこなせるかどうか不安で、金属製バンドを好まれる場合は、お買い上げ時、あるいはお買い上げ後のいつでも容易に変更できますので、どうぞご安心ください。





 本品の風防は「プレクシグラス」と呼ばれる高透明度のアクリル製で、周辺に宝石のようなカットが入っています。風防は緩やかなドーム状で、真横から見るとベゼルよりも高く盛り上がっています。盛り上がった風防は見た目が可愛いですが、平坦な風防に比べて瑕(きず)が付き易いという欠点があり、ガラス製風防の場合に大きな問題となります。ガラスに付いた瑕は除去できないからです。一方プレクシグラス製風防は瑕を簡単に磨き落とすことができます。本品にプレクシグラス製風防が採用されているのは、このためです。

 時計において、時刻を表す刻み目や数字が配置された板状の部品を「文字盤」(もじばん)または「文字板」(もじいた)、文字盤の周囲十二か所にある「長針五分ごと、短針一時間ごと」の数字を「インデックス」(英 index)といいます。本品の文字盤はライト・シルバー(明るい銀色)で、直交する多数のヘアライン(細い線)によって半艶消しに仕上げられています。銀色の文字盤は金属の冷たさを感じさせず、柔らかな光を放っています。文字盤上部に "BULOVA"(ブローバ)のロゴが黒文字で書かれています。

 インデックスは小さな棒状部品を文字盤に取り付けた立体インデックス、針はシンプルな形状です。いずれも金属光沢のある銀色で、半艶消しの文字盤を背景に、すっきりと見易いデザインです。本品をはじめ、二十世紀半ばの女性用時計はほとんどがドレス・ウォッチですので、秒針はありません。





 ぜんまいを巻いたり時刻を合わせたりする際のツマミを、竜頭(りゅうず)といいます。竜頭は三時の位置から突出しています。アンティーク時計は毎日ぜんまいを巻く必要がありますので、竜頭が摩耗しやすいですが、本品の竜頭は新品同様の良好な状態です。本品の竜頭は懐中時計の竜頭に似た愛らしい形で、本品が有するチャーム・ポイントの一つとなっています。

 なお時計を長年ご愛用いただいて竜頭が摩耗しても、当店にていつでも取り換え可能です。ご安心ください。竜頭のデザインを変更することもできます。現状の竜頭よりもシンプルな竜頭もありますし、石付きの竜頭もあります。





 上の写真は時計の裏蓋側で、"BULOVA"(ブローバ)、"14K GOLD"(十四カラット・ゴールド、十四金)、1959年のデイト・コード(L9)、及びケースのシリアル番号の刻印があります。裏蓋の歪み等の特筆すべき問題は何もありません。





 本品のムーヴメント(時計内部の機械)は電池ではなくぜんまいで動いています。本品のようにぜんまいで動く時計を「機械式時計」といいます。良質の機械式時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはたいへん硬い鉱物ですので、高級時計の部品として使用されるのです。上の写真に赤く写っているのがルビーです。ルビーは五つしか見えませんが、ムーヴメントの内部や文字盤側にも、あと十二個のルビーが使われています。

 必要な部分すべてにルビーを入れると、「十七石」(じゅうななせき)のムーヴメントになります。十七石のムーヴメントは「ハイ・ジュエル・ムーヴメント」(英 high jewel movement)と呼ばれる高級品です。本品のムーヴメントは十七石のハイ・ジュエル・ムーヴメントで、「セヴンティーン・ジュエルズ」(17 SEVENTEEN JEWELS 十七石)、「スイス」(SWISS スイス製)、「ブローバ・ウォッチ・カンパニー」(BULOVA WATCH Co. ブローバ時計会社)等の刻印があります。





 長方形の枠に囲まれた "6C" は、ムーヴメントの機種名(キャリバー名)です。「ブローバ キャリバー 6C」は最小サイズ(6 リーニュ)の女性用手巻ムーヴメントで、振動数は毎時 18,000振動 (f = 18000 A/h)、パワー・リザーヴは 35時間です。「ブローバ キャリバー 6C」はスイスのフェルサ社 (Felsa S.A.) の「キャリバー 21」と同じ機械で、ユニヴァーサル・ジュネーヴ (cal. 244)、ゾディアック (cal. 22)、ナストリクス、ジラール・ペルゴ、アレクソラ、ロレックス(cal. 280)等、有名時計メーカーの高級時計に使用される高級機です。





  上の写真の左側に写っている金色の大きな環は「天符」(てんぷ)という部品で、振子の役割をします。時計が動いているとき、「ブローバ キャリバー 6C」の天符は一時間に 9,000回、往復するように回転します。この天符をはじめ、機械式時計の部品はマイクロメートル(千分の一ミリメートル)の精度で制作されています。現代ではコンピュータ制御の産業ロボットを使って微細な加工ができますが、二十世紀半ばはすべての精密加工が人の手によるものでした。

 「ブローバ キャリバー 6C」は一円硬貨よりもずっと小さなサイズですから、その製作には熟練した時計師の技術が必要であったことは言うまでもありません。1959年当時、ハイ・ジュエルの金無垢時計である本品の価格は、初任給の五か月分以上に相当しました。現在の貨幣価値に換算すれば、八十万円から九十万円位でしょうか。良質の時計はたいへん高価であったわけですが、しかしながらこれは「ブランド代」ではなくて、「一生もの」と呼べるだけの内実、実質的価値を伴っていました。ムーヴメントにルビー製部品を多用するのも、優れた耐久性と長寿命を確保するためです。





 上の写真は本品と同年代のブローバ社の広告で、「ブローバの時計を一つ作るのに九か月かかる」(It takes nine months to make a Bulova watch.) と書かれています。実際には安価な時計であれば給与二か月分程度で売られていたので、この広告の意味は、もしもひとりの職人が時計全体を作ったとすれば九か月かかるということでしょう。現代の独立時計師は実際に数か月の時間をかけてひとつの時計を作りますから、数百万円から一千万円以上の価格になっています。





 上の写真は当店に在庫している部品取り用ムーヴメント「フェルサ キャリバー 21系」(ブローバ キャリバー 6C)の一部です。アンティーク時計はどこの店でも原則的に「現状売り」で、壊れた場合に修理が困難ですが、アンティークアナスタシアでは他店で不可能な修理に対応しています。「フェルサ キャリバー 21」のような高級ムーヴメントは特に手に入りにくいので、部品用ムーヴメントの確保にも力を入れています。詳しくはこちらをご覧ください。クリスタル(風防)交換や竜頭交換、バンド交換、バンドの種類の変更も可能です。高級感のあるコード・バンドがお薦めですが、お好みにより金属製バンドに変更することもできます。バンド交換は無料で承ります。





 本品は同時代の女性用時計に比べてもいっそう華奢で愛らしく、手首を可愛く飾ってくれます。時計は無料でオーバーホール(分解掃除)をした後にお渡しいたします。お買い上げ後も期限を切らずに修理に対応しますので、日々安心してご愛用いただけます。

 お支払方法は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払いでもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。ご遠慮なくご相談くださいませ。





本体価格 189,000円 販売終了 SOLD

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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