スペース・エイジの近未来デザイン 《ジガンデ》 スイスが誇る高性能ムーヴメント ハイ・ジュエルの女性用手巻き時計 スイス 1960年代

GIGANDET, Unitas cal. 6480N (Dugena 636), 17 jewels, Swiss, 1960s



 いまからおよそ五十年前、1960年代のスイスで作られた女性用時計。極端に横長のケースと文字盤に、緩やかなドーム状のプレクシグラス製風防を合わせています。

 1950年代から60年代にかけての時代は「スペース・エイジ」(英 the Space Age 宇宙時代)とか「アトミック・エイジ」(英 the Atonic Age 原子の時代)と呼ばれて、近未来を連想させる独特の産業デザインが流行しました。本品も時代の影響を強く受けており、紛(まが)う方無き六〇年代の空気をまとっています。





 時計内部の機械を「ムーヴメント」(英 movement)といいます。ムーヴメントを保護する金属製の筐体(きょうたい)、すなわち時計本体の外側を「ケース」(英 case)といいます。ケースは「ベゼル」(英 bezel)と裏蓋に分かれます。ベゼルはムーヴメントを保護するとともに、風防(いわゆる「ガラス」)を嵌める枠としても機能します。本品は個性的な横長のケースで、ベゼルは鏡面に仕上げられています。

 三時の位置でケース側面から突出するツマミを「竜頭」(りゅうず)といいます。本品をはじめ、アンティーク時計(ヴィンテージ時計)は「機械式」で、電池ではなく、ぜんまいで動いています。時計のぜんまいを巻き上げるとき、及び時刻合わせを行うときに、竜頭を操作します。竜頭の操作方法はとても簡単です。竜頭を右回りに回転させると、ぜんまいが巻き上がります。竜頭を一段階引き出して右回りまたは左回りに回転させると、針を早回しすることができます。





 ケースは時計の外形を決定するゆえに、時計をデザインする上で最も重要な要素ですが、審美的役割のほかにも、ムーヴメントを保護するという重要な役割を有します。時計ケースのなかで最も弱いのは、裏蓋です。日々の使用するなかで、裏蓋は手首と擦れ合って摩耗し易い部分です。しかしながら本品のケース裏蓋はステンレス・スティール製で、摩耗に強く、アレルギーも起こしにくい素材です。上の写真には「ステンレス・スティール製裏蓋」(英 STAINLESS STEEL BACK)の刻印、及びシリアル番号あるいはケースのデザイン番号と思われる数字(918)の刻印が見られます。





 時計において、時刻を表す刻み目や数字が配置された板状の部品を「文字盤」(もじばん)または「文字板」(もじいた)といいます。文字盤の周囲十二か所にある「長針五分ごと、短針一時間ごと」の数字を「インデックス」(英 index)といいます。

 本品の文字盤は横長で、五分毎のインデックスよりも中央寄りに、一分毎の刻み目が書かれています。一分ごとの刻み目よりも内側、三時の位置には、日付を表示する窓が開いています。





 本品と同時代(1960年代)には、しばしばラジオと一体になったトランジスター式置時計が流行していました。1960年代のトランジスター式置時計は文字盤の中央寄りに一分毎の刻み目があり、この点が本品と似ています。上の写真は 1962年のブローバ社の広告で、トランジスター・ラジオを横長文字盤のトランジスター・クロックと組み合わせた製品です。広告は当店の商品です。

 ただし本品の文字盤は置時計と同じではありません。置時計はいつの時代もアラビア数字またはローマ数字のインデックスを多用します。しかしながら腕時計の文字盤は年代ごとに特徴があり、1960年代には圧倒的多数が棒状の「バー・インデックス」を採用します。本品の文字盤も、十二時と六時のみがアラビア数字で、他はすべてバー・インデックスです。





 一分毎の刻み目で囲まれた上半分には、「ジガンデ」(Gigandet)のロゴがあります。ジガンデ社(Charles Gigandet S. A.)は 1959年に設立されたスイスの時計会社です。ジガンデ社は現在では消滅していて、わが国ではほとんど知られていませんが、ドイツのヴァクマン社(Wakmann)やスイスのブライトリング社(Breitling)と提携関係にあり、これら二社にムーヴメントを提供していました。

 一分毎の刻み目で囲まれた下半分には、フランス語で「十七石」(仏 17 rubis)の表記、及び「インカブロック」の文字があります。これらが表す意味については、後に説明します。文字盤の最下部には、小さな文字で「スイス・メイド」(英 SWISS MADE スイス製)と書かれています。





 本品の風防は「プレクシグラス」と呼ばれる高透明度のアクリル製で、緩やかなドーム状に盛り上がっています。盛り上がった風防は見た目が可愛いですが、平坦な風防に比べて瑕(きず)が付き易いという欠点があり、ガラス製風防の場合に大きな問題となります。一方プレクシグラス製風防は瑕を簡単に磨き落とすことができます。本品にプレクシグラス製風防が採用されているのは、このためです。





 時計内部の機械を「ムーヴメント」(英 movement)といいます。上の写真は本品から取り出したムーヴメントです。

 本品のムーヴメントは電池ではなくぜんまいで動いています。電池で動く「クォーツ式」腕時計が充分に普及したのは、1980年代のことです。本品が製作された 1960年代は、すべての腕時計がぜんまいで動いていました。

 本品のようにぜんまいで動く時計を「機械式時計」といいます。クォーツ式時計と機械式時計は、耳に当てたときに聞こえる音が全く異なります。秒針があるクォーツ式腕時計を耳に当てると、秒針を動かすステップ・モーターの音が一秒ごとに「チッ」、「チッ」、「チッ」 … と聞こえます。デジタル式など秒針が無いクォーツ式腕時計を耳に当てると、何の音も聞こえません。これに対して機械式時計、すなわち本品のようにぜんまいで動く腕時計や懐中時計を耳に当てると、囁(ささや)くように小さな連続音が「チクタクチクタクチクタク…」と聞こえてきます。





 現代のクォーツ・ムーヴメントはプラスチック製ですが、機械式時計のムーヴメントは丈夫な金属で作られています。赤く見えるのはルビーです。

 良質の機械式腕時計、懐中時計には、摩耗してはいけない部分にルビーを使います。ルビーはモース硬度「九」と非常に硬い鉱物(コランダム Al2O3)ですので、時計の部品として使用されるのです。本品のムーヴメントには十七個のルビーが使用されています。写真ではルビーが五個しか見えませんが、あとの十二個は機械の裏側(文字盤側)など、上の写真に写っていない部分に使われています。本品のように十七個のルビーを使用した「十七石」(じゅうななせき)のムーヴメントは、摩耗してはならない箇所のほぼすべてにルビーを使用しており、「ハイ・ジュエル・ムーヴメント」(英 high jewel movement)と呼ばれる高級品です。





 本品のムーヴメントは、スイスのユニタス社が制作した「キャリバー 6480N」です。「ユニタス キャリバー 6480N」(UT 6480N)は十七石の手巻きムーヴメントで、ハイ・ジュエル・ウォッチ用の高級機です。直径は 19.4ミリメートルで、一円硬貨よりも少し小さいですが、五十時間のパワー・リザーヴを誇ります。通常のハイ・ジュエル・ウォッチのパワー・リザーヴはおよそ一日半です。高い振動数(f = 21600 A/h)にもかかわらず二日を超えて動く本機は、スイス時計の高い技術水準を物語っています。


 1970年代、本品のような銀無垢ハイ・ジュエル・ウォッチの価格は、初任給のおよそ三カ月分でした。現代のクォーツ時計に比べるとずいぶんと高価ですが、現在スイスで作られている機械式時計も、価格はやはり数十万円です。ほとんどのクォーツ時計には、実はおもちゃのようなプラスチック製ムーヴメントが入っていて、そのせいで安く手に入るようになったのですが、良質の機械式時計の値段は、昔も今も変わりません。

 本品のムーヴメントは天符の振り角も大きく、良好な状態です。オシドリの嵌まる竜真の窪み、キチ車と鼓車の噛み合わせ部分、裏押さえの腕部分等、消耗しやすい部分にも異常はありません。アンティーク時計はどこの店でもほぼ現状売りで、修理にはなかなか対応してもらえませんが、当店ではアンティーク時計の修理に対応していますので、ご安心ください。当店の修理対応につきましては、こちらをご覧くださいませ。





 バンドについて。時計とバンドは別々のメーカーが作っていますから、アンティーク時計とバンドの組み合わせに必然性はありません。アンティーク時計に元々取り付けられていたバンドが破損している場合は取り換える必要がありますし、バンドが使える状態で残っているとしても、それは時計をもともと所有していた人が自分のサイズや好みに合うバンドを取り付けたのがたまたま残っているというだけのことです。ですからバンドは自分に合うものを選ぶのが、アンティーク時計との正しい付き合い方です。

 本品に適合するバンドの幅は、十四ミリメートルないし十五ミリメートルです。商品写真は緑色のイタリア製革バンドを取り付けて撮影しましたが、他の材質・色に交換しても構いません。バンドは消耗品ですから、長く使用していると必ず傷みますが、取り付け部の幅さえ合っていれば、市販のバンドにいつでも交換できます。バンドに関しては、アンティーク時計も現代の時計も違いはありません。ご安心ください。





 時計は無料でオーバーホール(分解掃除)をした後にお渡しいたします。お買い上げ後も期限を切らずに修理に対応しますので、日々ご愛用いただけます。お支払方法は現金一括払い、ご来店時のクレジットカード払いのほか、現金の分割払い(二回、三回、六回、十回、十五回など。金利手数料不要)でもご購入いただけます。当店ではお客様のご希望に出来る限り柔軟に対応しております。バンド等付属品に関すること、お支払方法に関することなど、どうぞ遠慮なくご相談ください。





本体価格 128,000円

電話 (078-855-2502) またはメール(procyon_cum_felibus@yahoo.co.jp)にてご注文くださいませ。




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