美しい草花の意匠で作られたモーニング・ジュエリー。1880年頃のイギリスで、エボナイト(ヴァルカナイト)により制作された品物で、カメオ様(よう)の作品をネジでバンドに固定して、ブレスレットとしています。
エボナイトは 1840年代に登場した素材で、ジェットの模造石として最もよく使われました。本品の草花文は型で抜いたもので、ジェットの浮き彫りを模しており、中央に咲く八重の薔薇を、一重の薔薇とローズヒップ、キク科の植物が取り巻いています。エボナイトで草花を模った作品を私はこれまでに多数目にしていますが、本品はそのなかでも最も丁寧に作られたひとつであり、たいへん美しい作例です。
ジェット製ブレスレットには、一つの大型センターピースを有するタイプと、同じ形のピースをゴム紐で繋げたタイプがあります。前者は破損しやすく、現代まで残っているものはほとんどありません。本品は前者を模したもので、エボナイト製であるゆえに、今日まで良い状態で残っています。
センターピースの土台が部分的に褪色して茶色がかっていますが、これは本品が百数十年の歳月をかけて獲得したパティナ(古色)であり、アンティーク時計の文字盤のパティナと同様のものです。真正のアンティーク品ならではの味わいとお考えください。商品写真のうちの何点かはバンド部分に全く艶が無いように写っていますが、実際には艶があります。