アンティークアナスタシア　神戸北野町　書籍　bibliothèque　高級な装丁の留め金付祈祷書　1867年　オリジナルの箱入り　ディジョン、ペリオン・エ・マルシェ・フルール社　1867年

Missel romain, no. 154

Pellion & Marchet Freres, Dijon, 1881

高級な装丁の留め金付祈祷書　1881年　オリジナルの箱入り

1882年から1902年の移動祝日表付

ディジョン、ペリオン・エ・マルシェ・フルール社　1881年

本のサイズ　15 x 11.5 x 3.5 cm 　590ページ　総革装　小口と天地に金

箱のサイズ　16.5 x 13.5 x 4 cm

　ダークグリーンの総革装に、銀めっきを施したブロンズ製唐草文金具を鋲留めした豪華装丁の祈祷書。金具は繊細な透かし細工でありながらも堅牢な作りです。鋲にも蝶番（ちょうつがい）にも緩みは一切ありません。

　小口と天地には金を施しています。ページの乱れは無く、祈祷書を閉じた際の天地、小口ともたいへん美しい状態です。

　見返しにはアラベスク風の枠で囲んだフルール・ド・リス（fleurs-de-lys　百合文あるいはアヤメ文）を並べます。表紙、裏表紙の裏側の縁には、十字と唐草による繊細なパターンを金箔押ししています。

　扉には「カトリック祈祷書　154」(Missel Romain no. 154) の文字を、中世フランスの羊皮紙写本を思わせる幅広の枠で囲んでいます。アカンサス文によるこの枠は、一見したところ銅板に見えますが、実際にはすべてウッド・エングレーヴィングで製作されており、その繊細さに驚かされます。

　扉の裏、表題紙には、発行人ペリオン・エ・マルシェ (Pellion et Marchet) のサイン、ディジョン司教フランソワ＝ヴィクトル・リヴェ師 (Msgr. François-Victor Rivet, 1796 - 1838 - 1884) の紋章、1867年10月18日付の出版許可、ディジョン司教総代理ルブフ師の名前が書かれています。

　2ページ後はウッド・エングレーヴィングによる全ページの挿絵で、十字架降架のシーンと、その上下にアカンサス文が描かれています。

　イエズスは広げた布の上に寝かされ、頭のあたりにはアリマタヤのヨセフとニコデモがいます。イエズスと十字架の間には茨の冠が落ちています。聖母マリアは跪いて手を合わせ、マグダラのマリアは十字架に寄りかかって放心しています。

　向かい側のページはふたつめの扉で、「カトリック祈祷書」(Missel Romain) という表題、及び発行元であるペリオン・エ・マルシェ・フルール社 (Pellipn et Marchet Freres Editeurs, Dijon) の名前が書かれています。

　扉の絵は祭壇を描き、中央上部には聖体を手にしたイエズス・キリスト、その下の左右にふたりの奏楽天使、祭壇基部のメダイヨン内には使徒ペトロ（向かって左）とパウロ（同右）が描かれています。

　この扉の装飾は、主要部分をウッド・エングレーヴィングで製作し、エッチングをこれに重ね刷りしています。エッチングで製作されているのは、祭壇周囲の唐草模様、祭壇中央の「カトリック祈祷書」と書かれた画面内の唐草模様、及び祭壇部分のごく一部（メダイヨンの縁の陰翳など）です。細部まで描き込まれた祭壇本体は、その繊細さにかかわらず、ウッド・エングレーヴィングで製作されています。

　祈祷書本文のページは、エッチングによる繊細な枠に囲まれています。本文には六種類の枠があり、聖母子、聖ヨセフ、麦と葡萄、アグヌス・デイ（神の子羊）、鳩、奏楽天使が、いずれも唐草文と組み合わされています。

　移動祝日表は 1882年から1902年の11年間に対応しています。インプリマートゥル（IMPRIMATUR　出版許可）の日付は 1867年10月18日ですから、この祈祷書は版を重ねたものであることがわかります。

　本文には数葉の挿絵ページが挿入されています。挿絵はいずれもウッド・エングレーヴィングによります。

　初聖体

　受胎告知と三博士の礼拝

　ヴィットーレ・カルパッチョの原画に基づく「幼子イエズスの奉献」

　MATRIMONIUM BEATAE MARIAE VIRGINIS　ラファエロの原画に基づく「聖処女マリアの結婚」

　本品はオリジナルの箱に入っています。箱は古びてはいますが良好なコンディションです。特筆すべき問題はありません。

　祈祷書と箱には書店のステッカーが貼られています。書店の所在地は、地中海に面したフランス南西部の町、ベジエ（Beziers　ラングドック＝ルシヨン地域圏エロー県）となっています。

　本品はおよそ130年前のフランスで製作されたたいへん古い品物ですが、箱に入って守られていたせいで、たいへん良好な保存状態です。装丁の革や金具にも特筆すべき問題は無く、中身も概ね綺麗です。古い年代を考えれば、驚くほど良いコンディションといえます。